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ケージの中だけで暮らしていたサルーキ【保護犬と暮らす】

保護犬と暮らす

元飼い主の生活が一変、ケージの中だけで暮らしていたサルーキ

この犬の名は、“プリンス”(サルーキ、オス、当時5歳)。彼にとって3番目の飼い主となるAさん宅に初めてやって来た時の姿である。まるで子犬の頃からAさん宅で暮らしていたかのようにリラックスしているこの様子からは、少し前までケージの中だけが生活場所で、糞尿まみれになっていたとは思えない。


Aさん宅に初めてやって来た時のプリンス(当時5歳)、ここが自分の家というかのようにリラックスしている/©E.A

Aさん宅には、プリンスが来る前に、“スペンサー”(メス)という名のサルーキがいた。

「私は犬派で、主人は猫派なんですが、どうしても犬が欲しくて、主人にはごり押しする形でスペンサーを迎えました」とおっしゃるAさんは、人と同じものはイヤ、個性を大事にしたいという気質もあって、数ある犬種の中でサルーキに惹かれたそうだ。

たとえ犬が苦手な人であっても、犬好きに変えてしまうのが彼らの魅力。ご主人もスペンサーと暮らすうちに、いつしか彼女の虜になっていったという。


先代犬、スペンサー。「プリンスとの出会いは、スペンサーが運んでくれた縁なのかもしれません…」(Aさん)/©E.A

一度スペンサーの首輪が外れ、そのまま遠くに走り去ってしまった時には、気になるものを見つければ飼い主の呼び戻しの声も耳に入らないと言われるほど走りに長けたサイトハウンドのこと、「これでもう終わった…」と思ったそうだが、ちゃんと自力で自宅の玄関に戻ってきたスペンサーにほっと胸を撫でおろすAさんご夫妻の様子が想像できるような気がする。

スペンサーを連れ、一緒に行った海や山、町…。思い出を1つずつ重ねながら幸せな月日が流れた。しかし、スペンサーが8歳となったある日のこと、突然の別れがやってきたのである…。

「それまで何の変化もなかったのに、突然“はぁ…”という声を出しかと思ったら、スペンサーが倒れてしまったんです…。急いで動物病院に向かい、電話で応急処置の仕方を教えてもらいながら、肋骨が折れるんじゃないかと思うくらい心臓マッサージをし続けました。でも…、スペンサーはそのまま逝ってしまいました…」

サイトハウンドのような胸の深いタイプの犬では、時折見られることがあるという突然死。犬としても落ち着きのある年頃、そして阿吽の呼吸で家族としてもよい関係が築ける年代となっての悲しい結末に、Aさんご夫妻は計り知れないショックを感じることとなってしまった…。

「生きている気力がなくなりましたし、多くの方が愛犬の死を通してペットロスに陥る気持ちもよくわかりました。そういう私を慰めてくれようとしての言葉だとはわかっていますが、高齢になって介護や高額の医療費が必要にならなかった分、親孝行な生涯の終え方だったんじゃないの?と言われることがあります。でも、それは違うんです…違うんです…」

言葉にならないその先に、スペンサーに対するAさんの深い愛情に絡み合った悔しさや悲しさ、寂しさ、困惑…、そんな複雑な想いを感じずにはおれない。

まだまだ未来ある犬生途中での突然の死。寝たきりとなり、介護をしながら近いうちに逝くのだろうということを覚悟しながらも、それを認めたくない死。苦しみから解放するために、敢えて眠らせてあげるという苦渋の選択となる死。

いずれであっても、そこに愛犬を想う深い愛情があることに変わりはない。

未来をともに過ごせなかった悔しさ、切なさ、整理しきれない戸惑い。長い年月をともに過ごし、老いを目の当たりにするからこその愛おしさと深い喪失感。愛犬のためとはいえ、命を絶つという自分の選択が正しかったのかと自問自答を繰り返すことになる苦しさ。

それぞれの命に、それぞれの死があるように、飼い主さんの心情や状況も様々であり、互いの死を天秤にかけることなどできないのではないだろうか。その辛さを、そっと受け止めてあげることくらいしかできないのでは?…。

Aさんは、毎日のように見ていたサルーキのサイトやブログも、そんな気さえ起らなくなってしまった。抜け殻のように日々を過ごし、3ヶ月が経とうという頃、ようやくパソコンを開き、何気なく目にしたブログで、「サルーキの里親募集」という文字を目にしたのである。見ると、その犬がいる場所は、Aさんの実家がある地域に近い。

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