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笑うダックスフント【虹の橋を渡る日まで】

虹の橋を渡る日まで

ノロノロ走る車の後に着いてしまった。もみじマークや『赤ちゃんが乗ってます』マークがついていたら、「しょうがないな」ですむけれど、そうじゃない。黄色信号で止まった時は思わず「あーっ」と言ってしまった。

普段なら許せるのに、必要以上にナーバスになっている理由はひとつ。今、夫と別居中で離婚に向けた話し合いをしている最中だから。普段の何倍も、心がささくれ立っている。

ため息をつきながら信号が変わるのを待っていたら、前の車の窓からチラッと犬が顔をだした。鼻を上に向けて目を細め、横を向いて、後ろにつけていた私を見て、にかっと口を割って笑って、すぐに引っ込んだ。あっという間だった。

うちの子と同じダックスだ。細長い顔に、耳が垂れていて、まるくクリクリした瞳が何とも可愛らしい。ちらっと私を見て、口をにかっと広げて笑った。見知らぬ犬から笑いかけられたのは初めてで、お腹の底からぐうっと温かいものが満ちてきて、涙が出そうになった。

前の車がノロノロ安全運転をしていたのは、犬が乗っていたからなのか。それなら、仕方がないね。ダックスならば、全然オーケーだ。可愛いなあ、うちの子の方がもっと可愛いけどね。

そういえば、別居に至るまでの長い時間、うちの子には本当に迷惑をかけてしまった。ろくに相手をしてあげる時間がなくて、寂しい思いをさせていたのかもしれない。本当に可愛そうなことをしてしまったな。早く帰って一緒に遊んであげたい。

うちの子は離婚のきっかけをつくってくれた恩人(犬)でもある。ぐずぐず迷っていた私の背中を押してくれた。酔った夫は玄関で寝ていたうちの子を、あろうことか蹴とばそうとしたのだ。あわててかばって、腕を傷つけたのが、まさに怪我の功名。さっきの弁護士も「あなたがケガをした時の医師の診断書は、暴力の証拠になります」と言ってくれた。

ダックスは俊敏な猟犬だから、私が庇ってやらなくても、さっと逃げただろう。ケガは痛かったけど大したことはなかったし、うちの子は良い仕事をしてくれたんだな。

別居までのすったもんだの間も、あの子は私にぴったりと寄り添い、涙をなめて、笑顔をくれた。散歩をしなければいけないから、どんなにお酒を飲んでも、朝はやく起きた。私はあの子に守られていたんだ。それなのに、大嫌いな留守番ばかりさせて、本当にダメな飼い主だ。

うちの子がわが家に来てくれたのは、結婚の唯一の成果だった。夫に蹴られそうになった時、この子が死んだら私も死ぬって思ったっけ。それだけ大切で、かけがえのない存在だ。今だって、うちの子に何かあったら、私は生きていられないと思う。いつか、うちの子が自然に虹の橋を渡る日まで、他の何よりも大切にして、とびきりの愛で包んでやりたい。

信号が変わって前の車は相変わらずノロノロ発進しだした。私とこの運転手は同じ犬種の飼い主だから、理解してあげなくちゃね。可愛い笑顔のダックス君も、うちみたいに飼い主さんを助けたりするのかな?もう一回顔を出してくれないかな、と思いながら、のんびりと後ろを走った。

文/柿川鮎子

「犬の名医さん100人データーブック」(小学館刊)、「犬にまたたび猫に骨」(講談社刊)、「動物病院119番」(文藝春秋社刊)など。作家、東京都動物愛護推進委員)

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