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横断歩道で見た老人と犬【虹の橋を渡る日まで】

虹の橋を渡る日まで

交差点で信号待ちをしていると、横断歩道を渡る老人と犬が目の前を通り過ぎた。老人は背中をまるめて、足を引きずるようにゆっくりゆっくり歩いている。その歩調にあわせるように、顔の真っ白な柴犬が、これまたゆっくりゆっくり横断歩道を渡っていく。時間をかけて歩道を歩く姿を目で追っていたら、突然、妻と家にいるうちの子を思い出した。

うちの子はまだ3歳の元気盛り。興奮すると走り回り、散歩に命を懸けている。ともかく構ってもらいたくて仕方がない甘えん坊な暴君で、先日も妻の大切にしていたバッグに歯型を付けて、叱られていた。老いや死なんて遠い話のようだが、考えてみたらあと10年もたてば、老犬だ。あんな風に、ゆっくりゆっくり歩く日がくるのだ。そう思ったら視界がぼやけてきた。鼻水も垂れてきて、これはやばい。

コンビニの駐車場に営業車を停めて、コーヒーを買ってまずは落ち着く。最近のコンビニコーヒーは美味くて、いいなあ、今夜は何を食べようかな、なるべく嫌な想像をしないように逸らしていても、脳裏にこびりついた老人と老犬の映像が頭から離れない。

老人と犬は、すごくいい時間を過ごしたのだろう。犬は足を引きずる老人に合わせるように、ゆっくり歩いていた。顔が白い柴犬で、目もちょっと白っぽかった。赤い革の首輪をしていたから、女の子だったのかも。今は老犬だけれど、きっと子犬の頃は顔が茶色くて、目が真っ黒な美犬だった。じいちゃんと柴犬は恋人みたいに仲が良くて、ばあちゃんが嫉妬するぐらい、いつも一緒にいたのかも。

やばいよやばいよー涙と鼻水が止まんないよー、真昼間のコンビニの駐車場で泣くオレまさに不審者。まさかの展開に自分でも驚く。映画でもそんなに泣かないのに、横断歩道の老人と犬にやられちまった。

コーヒーを飲み干して、ふと我に返った。そして思ったのは、足を引きずってゆっくり歩く未来の自分のそばに、うちの子はいない、ということ。うちの子は今3歳で、どんなに長生きしても、あと10年とちょっとしか生きられない。老人になる前に、うちの子は亡くなってしまう。

あと10年で何ができるだろう。犬の寿命の短さを思うと、こんな風にコンビニでコーヒーを飲んでいる場合じゃない気がする。あいつのしてやりたいことを、もっとやるべきだった。どうしてそんなに簡単なことを、忘れてしまっていたのだろう。

散歩命で、リードを持つと狂ったように走り回るあいつ。今日帰ったら、遠回りして大好きな公園まで散歩をしてやろう。週末は海岸まで行って、好きなだけボール遊びに付き合うのだ。部屋で走り回れるよう、床に置きっぱなしの物を片付ける。フードもちょっと良いのにしてやろう。そういえば、健康診断とか、どうなっているのか、妻に任せっぱなしだったっけ。

良い飼い主じゃなかった自分を、あいつは許してくれるだろうか。虹の橋に渡る日まで、すべて幸せな毎日にしてやりたい。自分がやるべきことがわかって、目の前に道が拓けた。ティッシュで顔を拭いて、エンジンをかける。

文/柿川鮎子

「犬の名医さん100人データーブック」(小学館刊)、「犬にまたたび猫に骨」(講談社刊)、「動物病院119番」(文藝春秋社刊)など。作家、東京都動物愛護推進委員)

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