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高齢者のペット飼育を取り巻く光と影

高齢者のペット飼育を取り巻く光と影

先日、東京ビッグサイトで開催された『第9回インターペット』。1日では見きれないほどの展示やイベントがあった中、筆者が足を向けたのは『人もペットも高齢化-老老介護の対処法』と題した公開セミナーであった。


近年注目されるテーマなだけに、真剣に耳を傾ける来場者も多い。

高齢者のペット飼育を取り巻く光と影

高齢者がペットと暮らす、または接することで心身に良い影響があることは知られている。しかし一方では、飼い主である高齢者の入院や闘病、死去などによりペットが保健所や動物愛護センターにもち込まれる、十分に世話をできないことによる近隣からのクレーム、多頭飼育、などの問題も浮上してきており、二面性をもつのが現状である。

アメリカにおいては、2017年までの13年間で、犬との散歩に関連する高齢者の骨折が163%増えていることが先月発表されており、研究者はペットとの暮らしの効能を十分に認めつつも、こうしたケガを最小限に抑えるために、高齢者の生活における注意事項に含めるべきであると指摘している(*1, 2)。

また、直接的にペットに関係するわけではないが、イギリスでは2018年に孤独問題担当国務大臣が新設され、高齢者を含む孤独・孤立の問題に国を挙げて取り組もうとしているのはご存知のとおりだ。もちろん日本も含め、各国ともに高齢社会を目前にして、高齢期の生活は大きなテーマとなっている。

高齢者のペット飼育の現状

そんな状況にあって、国内では飼い主も高齢、ペットも高齢、いわゆる“老老介護”、または“老老老介護”のケースも目立つ。ペットの訪問介護サービスの現場では、「近年、60代以降の飼い主さんからの依頼が増えていると感じる(ペットケアステーション大阪:杉原真理氏)」とのこと。中でも、息子や娘が遠方に住んでいるため、ペットの介護に家族の協力が得られないケースが多く、また、ペットというより、自分自身の健康に不安があるために依頼をするケースが増えているという。

老犬介護ホームにしても、高齢の飼い主が高齢のペットを預けるケースは珍しくなく、セミナーのタイトルにある老老介護の“対処法”を考えるならば、どうしても高齢者のペット飼育環境自体を見つめ直さなければならない。

たとえば、飼い主が認知症になったとしたら? 以前、別の記事でもお伝えしたように、犬の散歩にも行かず、世話がおろそかになっている高齢者がいたとして、それは認知症による認知力の低下が原因になっていることもあり得るのだ。

そのような場合、単にその高齢者にクレームを寄せ、ペットを引き取って新たな飼い主を探しただけでは事が収まらない。高齢者がペットを取り上げられたと思ってしまえば、また違うペットを飼い、同じことが繰り返される可能性もある。

「そういう問題に対処するには、ペット側のアプローチだけでは高齢者の福祉の面までは行き届かず、また、人側のアプローチだけではペットのことまで気が回らない。人とペット、両サイドが協力し合って高齢者のペット飼育支援および問題解決に取り組む必要がある」と倉田美幸氏(認定特定非営利活動法人動物愛護社会化推進協会理事、介護支援専門員/ケアマネジャー)は言う。


昨年9月、厚生労働省が訪問介護などで利用できる介護保険適用外のサービスについて明確化したが、その事例の中に「ペットの世話」が含まれていることを問題視する意見も。なぜなら、ペットの世話には動物の知識と動物取扱業の届出が必要なことが無視されているからであると。 

高齢者とペットに優しい社会づくりを目指すために

それを実現する一つのスタイルとして紹介されたのは、大阪市玉造(たまつくり)にあるペット共生型有料老人ホーム『PEPPY HAPPY PLACE TAMATSUKURI』である。


一緒に入居できるペットは、犬2頭(原則体重30kg以下)、猫3匹まで。 

同老人ホームを展開する新日本カレンダー株式会社の西澤亮治氏(PEPPYグループペピイHRD事業部事業部長〕の説明によると、同社に併設された大阪ペピイ動物看護専門学校に、さらに併設される形で老人ホームがあり、全45戸の居室の他(キャットウォークや猫用テラスを備えた猫飼育者専用タイプもある)、訪問看護事務所、カフェ、トリミングルーム、ドッグガーデン、入居者専用動物診察室などが備わっており、犬の保育園や子猫譲渡センターもある。本社ビル内には夜間の救急対応ができる動物病院も入っているので、入居者としては安心材料が多いことだろう。


同老人ホームの建物内にある『ロンパールーム』は、子猫を新しい飼い主に譲渡するために大阪市獣医師会が行っている取組みを支援する施設。 

そう、動物好きにとって、動物病院は身近な存在でもあるわけだが、その動物病院という立場からの高齢者ペット飼育支援についてが、柴内裕子氏(赤坂動物病院総院長)のお話である。

近年、同動物病院では、高齢の飼い主がペットを友人・知人に託す時の相談を受けたり、将来的なペットのケアの依頼を受けたり、場合によっては遺言書を預かることもあるそうだ。また、若い人であっても一人暮らしであると自分に万一何かあった時のことを考えて、自宅の鍵を預ける人もいるという。

少なからず、ペットとの生活には不安もつきまとうのが現実なわけだが、そうした背景の中、赤坂動物病院では、『70歳からパピー、キトンとともにプロジェクト』なるものを行っている。「これはその年齢から子犬や子猫と暮らそうという意味ではなく、そのくらいの気持ちと夢をもちましょうという意味です」と柴内氏。そのために、高齢者がペットを飼っている場合、電話サポートや動物看護師による訪問サポートなども提供し、高齢者とペットが少しでも生き生きと生活できるよう、動物病院としてできることを支援したいとしている。

ある調査によると、犬との散歩で男性は0.44歳、女性は2,79歳、健康寿命が延びるとか。また、海外では、高齢者こそペットと暮らすべきだという考え方をもつ動物保護シェルターもあるという。 

では、ペット業界全体としてはどうなのか?というと、「まだそこまで意識が高まっていない」と越村義雄氏(一般社団法人人とペットの幸せ創進協会会長)は言う。現状のままでいくと、将来的には犬の数が今の半分になると予想されるそうだが、今後、益々高齢者層が増えていくのに対して、高齢者がペットと暮らしづらい環境が続くならば、当然ペットを飼う人・ふれあえる人自体が減少していくと考えられ、ゆくゆくはそうなってしまうのかもしれない。

しかし、そうなるとペット産業としては大きな打撃だ。そして、越村氏の言葉を借りれば、「人とペットのQOLを高めることも難しくなってしまう」と。高齢者のペット飼育支援・問題解決に取り組むなら今だということなのだろう。現状の課題としては、冒頭でも述べたように、高齢者のペット飼育にまつわる光と影の二面性をどう融合させていくか。そのための解決策として、

・高齢者が集まる集会所に動物とのふれあいや世話ができるハウスをつくる。

・飼い主が死去した後の、ペット用ケアハウスを確立する。

・地域民生委員による飼い主の無事確認ができるシステムを確立する。

・訪問介護にペットの知識をもった人によるケアもオプションで付ける。

・医療介護や訪問診療、在宅医療の分野でも動物病院として協力できるよう努力する。

・ペットの介護サービスや施設の普及、およびそれができる人材の確保。

などが今後への期待も込めて提案された。

子どもが成人し、親の手元を離れたことを機にペットを飼い始めるミドル層の人も多い。そのペットが高齢になった時には、飼い主も同じくシニア層に手が届く時期。人も動物もやがては歳をとる。決して自分に無関係ではない高齢期を、みなさんはどう過ごしたいだろうか?

今後、様々な取組みがなされていくとして、少なくとも、お金に余裕のある飼い主が利用できるサービスだけでは意味がない、ペットを愛する多くの人が利用できるものでなければ、と筆者は思う。犬や猫たちが学歴や収入の差など気にせず私たちを受け入れてくれるように、ペットを愛する人たちも同じような目で見ないと。そうでなければ、高齢者やペットに優しい真の社会はやって来ない気がするから。

参考資料:

(*1)Bone Fractures Increasing as Seniors Walk Dogs to Stay Active / Penn Medicine News, News Release, March 6, 2019

(*2)University of Pennsylvania School of Medicine. “Bone fractures increasing as seniors walk dogs to stay active.” ScienceDaily. ScienceDaily, 6 March 2019. www.sciencedaily.com/releases/2019/03/190306110620.htm 

取材・写真・文/犬塚 凛

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