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【青山尚暉のワンderful LIFE】『夢よ醒めないで』(2)

第一章 『夢よ醒めないで』 (2)

ところで、エクルの「最初にして最後にしてほしい」大事件は、エクルがわが家にやってきてから3日目に起こりました。夕方、カミサンが外出していたのをいいことにボクがお散歩に連れ出したときのこと。実は、カミサンから「まだお散歩ということに慣れていないから、必ずワタシが行くわ」と言われていたのに、です。なんせカミサンは浦安市の「犬のしつけ教室」でナナとともに指導員を務めたこともある、犬の気持ちが恐ろしいほどよく分かる女性で、犬との接しかたにとても慣れているからです。それでもわが家にやってきたばかりの犬といっしょにお散歩したかった・・・この気持ち、愛犬家の方なら分かりますよね。

つまり、始めてボクとお散歩に出たわけですが、行き先は家から600メートルほど離れた公園です。最初はまずまず楽しそうにしっぽを少し振りながら歩いていたものの、途中でお散歩中のミニチュアダックス軍団に遭遇。新参者ゆえ、ワンワンキャンキャンとほえられまくったわけです。軍団の合唱ですから凄くうるさい。エクルからすれば、ずっと小さな犬達にもかかわらず、しかーし、エクルは突然、震え出しました。おそらく、人間社会に下りて来て間もなく慣れていないのですからビビッて当然です。とはいえ、公園までの行程は残り1/3。行くしかありません。オシッコだってしたいかも知れないし。

が、公園の手前まできて完全に動かなくなってしまったんです、ペタッと地面にへたり込んでしまった。車道だから危ない。エクルを何とか引っ張るボク。

そうこうしているうちに、突然、首輪がスルリと抜けてしまった。そして一目散に走りだしたのです、交通量の多い道路に向かって・・・。

エクル、エクル!!と叫びながら追いかけ、ほとんどスライディング状態でエクルの体を取り押さえたのはもちろんです。そのとき、何を思ったかですって。カミサンの怖い顔ですよ。もし、エクルに何かあったら・・・。タダじゃ済みません。

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まだ、人間を信じきっていなかったころのマリア。顔つき暗く、表情は今とはまるで違います

それだけなら、カミサンにそのことはバレなかったと思います。でも、バレました。

なぜ、バレたかと言えば、その続きがあるからです。取り押さえたのはいいものの、その瞬間、エクルは怖さのあまり放尿。お尻の回りはビショビショ。なおかつ腰が抜けきっていますから、まったく立ち上がれず、歩けもしない。とにかく震えるエクルを安心させるため、全身を撫ぜてあげながらその場で30分は2人で座っていたと思います。歩道の真ん中ですよ。かなり不自然な光景だ。

でも、こういうときに限って、知り合いは通らない。携帯電話も忘れている。そうこうしているうちに、ボクのほうが強烈な尿意を催してきたのです。意を決して帰るしかありません。

そこで最後の手段。26・65㎏のエクルを胸に抱き上げ、家に向かって歩くことを決意しました。でもです、26・65㎏かつ、抱かれようとする意思のないヘターッとした大型犬を抱くのは相当辛いです。重いです。600mは遠いです。20mほど歩いては降ろし、30m歩いてはゼーゼーしながら、なんですから(ほとんど犬泥棒に見えたかもしれない)。

結果、両手がかなりの筋肉痛となって、その大事件がカミサンにバレてしまったというわけです。でも、本当に “気持ち的には” 死ぬかと思った、ボクにとっては大事件だったんですよ。

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文/青山尚暉(あおやま・なおき)

ジャーナリスト。1956年東京生まれ。雑誌編集者を経験した後、フリーのモーター&トラベルジャーナリストに。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員も務める。愛犬家でもあり、ドッグライフプロデューサーとしても活動中。コンパニオンアニマルとしてのペットとのドライブ、ペットと泊まれる宿に関しても詳しく、Web、専門誌、一般誌などで「愛犬との快適安心な旅スタイル」を提言中。現在、ラブラドールレトリーバーのマリアと、ジャックラッセルのララと暮らしている。PETomorrowのほか、小学館ブックピープル、ONE BRAND、レスポンス、カートップなどでも愛犬とクルマ関連の記事を連載中。2016年4月には愛犬とのドライブ旅行の集大成となるムック本『愛犬と乗るクルマ』が発売されている。

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