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「アニマルセラピー活動の今」JAHA年次大会市民公開講座レポート(前編)

プールで犬と一緒に泳ぐ!

更には、“わんわんクラブ”と名付けたクラブ活動では子供たちの自主性を重んじ、犬が入ったクレートの運搬(車と教室間)、ウンチやオシッコの処理、散歩といった世話は子供たちがこなし、年間を通じてやりたいことをみんなで話し合って活動内容を決めている。

ウンチは汚いものではなく、健康のバロメーターであると教えれば、観察する目も養え、子供たち自身が自分の健康管理もある程度できるよう、その芽を育てることもできる。オシッコやウンチの処理も責任感を育むことができ、また、高学年の子が低学年の子に教えることで自分が手本となる意識をもたせることもできる。

当初、小学校での活動中は犬に排尿排便をさせなかったということだが、動物とのふれあいから学びを得るのであれば、それは不自然なことである。「犬は犬らしく、犬にもっと自由を。だからこそ、しつけが大事になる」という理念をもつ綾部さんだからこそ、生理的な面からも学ぶことは大きいと考え、ある時期から活動中でも犬に排尿排便させて欲しいと学校側にお願いをしたそうだ。

さて、クラブ活動の内容はというと、音楽に合わせて犬と行進したり、犬のためにおやつを手作りしたり、獣医大学の教授から動物の体の構造や遺伝子についてなど子供向けとはいえ専門的なことを教えてもらうなど実に多彩であり、講演で発表された写真には笑顔が溢れる子供たちの姿が写っていた。

その他、プールで犬と一緒に泳ぐというユニークな活動もある。泳ぎが苦手で、先生や周囲の大人に言われてもなかなか泳ごうとしなかった子が、犬が泳ぐ姿を見て一緒に泳ぎたいと思うのか、自分から泳ぎはじめたり、洗面器で顔を水につける練習を始めてみたりと、犬たちは物言わぬ水泳コーチに変身する。この活動は2011年に始まって以来、毎年行われているということで、それだけ子供たちにとっては楽しい活動となっているようだ。

素直な気持ち、素直な心

2002年にCAPP活動を開始し、綾部さんがこの14年間で感じたことは、「犬とのふれあいや世話などを体感することで子供たちの意欲や判断能力の向上、集中力の持続、共感性の芽生えというものは目覚ましく、命の大切さについて気づきを得ることはもちろん、思いやりや責任感、我慢というものも身に付けることができ、何より子供たちの表情が自信に満ちていることが感慨深いです」と講演を締めくくった。

続いて、実際に動物介在教育を導入している小学校のお話をご紹介したいと思う。

犬とのふれあいを通し、自信を得て輝く表情に

心の安定や、課題の克服、表現力を伸ばしたい
宮崎県宮崎市立大淀小学校の田崎みちよ先生(知的特別支援学級担任 特別支援教育コーディネーター)は前任校で動物介在教育の活動を始めて以来、今年で11年目になり、現在は知的特別支援学級の担任をなさっている(特別支援学級には知的特別支援学級と自閉症情緒支援学級とがある)。ちなみに、活動のために来てもらっているボランティアは、Part1の記事でご紹介した綾部動物病院のスタッフチームである。

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「子供たちの成長を感じる一方で、それぞれの子に合わせた活動内容を決めるのは難しいという課題もあります」宮崎県宮崎市立大淀小学校 田崎みちよ先生(知的特別支援学級担任 特別支援教育コーディネーター)/©Pmoon

この活動で目的とするところは、子供たちの心の安定と、それぞれの課題の克服、思考力や表現力、決定力を育て、向上させること。たとえば、児童の中には、自分の気持ちをうまく表現できない、人の言っていることを落ち着いて聞けない、人の言葉だけでは動けない、姿勢が保てないというような子たちがいる。

こうした子らが、自分の言葉で気持ちを表現する、楽しみながら何かに取り組む、落ち着いていられるというのは大きな変化であり、成長でもあるのだ。一人一人に目標とするものはあるが、ほぼ共通しているのは、子供たちに自信をもたせたいという点。犬とふれあうことで、子供たちはどう変化したのだろうか。

犬とふれあうことでの効果

同校では月に1~2回、年間で15回程度の“わんわん学習”の時間を設けており、月ごとに「わんちゃんプロフィールをつくろう」「おせわのしかたを知ろう」「わんちゃんといっしょに泳ごう」「いっしょにうごいてみよう」などそれぞれの児童の状況に合わせた内容も考えられたテーマが決められている。

クレートに入った犬を出す時、どうやって出して、どうリードを付けたらいいのか子供たちは一生懸命考える。

ペットシーツの上で犬にトイレをさせる時には、それを促す「ワン、ツー」という言葉を発しなければならないので、寡黙である子も声を出すようになる。犬と一緒にミニアジリティーにトライするならば、バーをジャンプさせる時には「ホップ、ホップ」と声が出る。

自分が担当したい犬を決める時には、友達と話し合って、時に譲ったり、譲れなかったり。これも人とのコミュニケーション力の種となり得る。

犬と一緒にしたいことを発表したり、その感想を発表したりすることも表現力の向上につながり、特に読み書きが苦手な子にとっては大きな刺激となることだろう。

また、犬をダッコする時に、「脚を揃えていないとわんちゃんが落ちちゃうよ」と言うと、姿勢が崩れがちだった子は自分の体を意識するようにもなる。この子の場合、落ち着きがなく、やや粗暴な態度もあったということだが、写真に写るその姿は穏やかな表情を浮かべ、とてもそのようには見えない。

以前は姿勢が崩れると先生が「姿勢!」と注意していたそうだが、犬とのふれあいを通じ、以後は「わんちゃんが落ちちゃう」と言うだけで直そうとするそうだ。「それが児童にとっても自分にとってもストレスにならない」と田崎先生はおっしゃる。熱意があり、相手を思ってのことであっても、人対人の場合は少なからずストレスを生むことがある。しかし、犬の場合はいいクッション材にもなれるのだろう。

更には、子供というのはなかなか苦手なものを克服しようとはしないものだが、Part1の記事でもご紹介したように、犬が一緒にいるということでそれを克服しようとする気持ちが湧いてくる。水が苦手で1年前には先生にダッコされてプールに入っていた子が、プールで犬と一緒に泳ぐ活動(Part1の記事を参照)を経験してからは、「来年は一緒に25m泳ぐ!」と満面の笑顔で楽しそうに答える姿がすべてを物語っているかのようだ。

学校のプールに犬?と思われる人もいるだろうが、プールに犬を入れることに関しては、保健所や獣医師、校長先生、体育主任、保健主事などと話し合い、理解と協力を得ることができて実現できたという。

気持ちや行動が変われば、表情も変わる

その他、「登校への意欲につながった」「わんわん学習以外でも意欲的に取り組めるようになった」「我慢ができるようになった」「進んで掃除ができるようになった」「歩く速さを意識できるようになった」などの変化も見られたという。何より表情が変わったというのがもっとも素晴らしい変化なのではないだろうか。

保護者からは、「これまで人を見て行動したり、真似をしたりしていたのが、自分で考えて行動をし、それを文章にすることもできるようになって成長を感じる」という感想も寄せられたそうだが、思わず涙が出そうになったという田崎先生の言葉には、子供たちのことを思う愛情を感じるばかり。

ただ、動物介在教育を行うには難しい点もあり、子供たちそれぞれの状況にかなり違いがあるため、活動内容を決めるには頭を悩ませること、経費が生じる場合の対応などは考えていかねばならないとしている。宮崎県ではより効果的で有意義な学習ができるよう、動物介在教育に携わる機関や学校(小学校10校、大学2校、福祉関係、動物園関係)などの関係者が話し合いあいの場をもてる“わんわんミーティング”というものを発足したそうなので、今後は課題となる点も少しずつ対応できるようになっていくのかもしれない。

会場には小学校や中学校の教員も足を運び、熱心に講演に耳を傾け、時に質問する姿も見られた。動物介在教育が熱心に行われている学校や地域もあれば、まだ先生やPTAのアンテナが動かない学校や地域もある。全国津々浦々まで広がりを見せるには、ボランティアやPTAはもちろんだが、何より現場の先生たちの理解に大きく期待したい。

最後に、子供たちにとって良き理解者であり、良き応援者であることを心がけているという同校の柳校長からは、わんわん学習を前任の校長から引き継いだように、後任の校長にもしっかり引き継いでいきたいと挨拶があった。子供たちを育てていくのと同様に、動物介在活動も長い目で育てていくことが大事だろう。

ちなみに、JAHAにおけるCAPP活動の訪問先は、関東で62ヶ所、北海道18ヶ所、中部・近畿・中国では49ヶ所、四国・九州35ヶ所(2016年4月現在)となっており、訪問回数(2015年は1162回)や犬猫を含む参加ボランティアの数(7745人、犬6255頭、猫688匹/2015年)も年々増えている。

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後編へ続く_

取材・文/犬塚 凛

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