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「可愛い」の残酷な裏側。犬猫の殺処分について向き合う『奴隷になった犬、そして猫』

犬猫の殺処分について向き合う「奴隷になった犬、そして猫」

減ったとはいえ、いまだにおよそ3万匹(2020年度、負傷動物を含む)もの犬猫が全国で殺処分されています。ペット業界の光と闇を丁寧に取材し、まとめたノンフィクションが発刊しました。「奴隷になった犬、そして猫」(朝日新聞出版発刊、太田匡彦著、定価1500円+税)です。

本書では猫ブームの裏側、生体販売の問題点、業界団体や政治家の動き、「改正動物愛護法」成立の舞台裏などが紹介されています。

猫は照明を112時間以上あてると、年3回は産める。子猫は死ぬと冷凍庫に保管された、など、愛猫家にとっては背筋が凍るような言葉が飛び出して切なくなります。「かわいい」だけでは済まされない現状に、しっかり向き合う必要があることを教えてくれる一冊です。

今回は著者の朝日新聞記者、太田匡彦さんに文章でインタビューをお願いしました。太田記者、よろしくお願いします。

取引申請書を調べる地道な取材からスタート

――新刊書は本文409ページに法律の条文33ページが加わった大作です。太田記者が最初にペット問題に取り組むようになったきっかけを教えてください。

太田記者 両親ともに獣医師免許を持っていて、子どもの頃から犬はもちろん、ウズラ、ハムスター、モルモットなど常になんらかの動物に囲まれて育ちました。大人になり、新聞記者という職業に就いてからは、全国の自治体で殺処分される犬猫の数の多さに心を痛めていました。いつか、この問題について記事を書きたいと考えていましたが、なかなか取材の糸口を見つけられませんでした。

そうしたなかで2005年から経済部の記者として、流通業界を取材する機会を得ました。その経験を通じて、ペットの流通について取材していけば、殺処分の問題に行き着くのではないかと考えました。週刊誌「AERA」編集部に異動した後、2008年から取材を始めました。

最初は、主要な自治体に犬の「引取申請書」について情報公開請求をするところからのスタートでした。引取申請書というのは、犬や猫の所有者が、自治体の保健所などに犬猫を持ち込む、つまり捨てる際に記入する書類のことです。これを1枚1枚精査していくことで、繁殖業者やペットショップが、繁殖に使えなくなった犬や売れ残った子犬を自治体に持ち込み、結果として殺処分させている実態が浮き彫りになったのです。

生体販売ビジネスの実情を知る手掛かりに

――この本で太田記者が一番読んで欲しい部分はどこですか?

太田記者 前著『犬を殺すのは誰か ペット流通の闇』(朝日新聞出版)では、犬を中心に行政殺処分の問題とその背景にある生体販売ビジネスの問題に切り込みました。そこで今回はまず、この数年で流通量が急激に増えている猫の問題にスポットをあてました。

犬で「悲劇」を生んできた、生体の流通・小売業(ペットショップ)を中心に据えたビジネスに、猫も巻き込まれ、同じ「悲劇」が再生産されているのです。

そして、2012年に行われた動物愛護法改正がいかに不十分であったか、対して2019年の改正はどのように進み、なにが達成され、なにがまだ足りないのか、事細かに追いました。

というわけで、現在おこなわれている生体販売ビジネスが犬猫にとっていかに過酷なものなのか、またその状況を誰が改善しようとしていて、一方で誰がなぜ現状維持を望んでいるのか、そのことが読者の皆さまに伝わればいいなと思っています。

なお10年以上にわたる取材の成果を、データも含めてとにかく詳細に書き込みましたので、ペット流通の現状を知る「資料」としても使ってもらえたら幸いです。

殺処分で問題になっている離乳前の子猫

――犬や猫の殺処分の数もなかなか減りません。私たち飼い主ができることは、保護犬・猫の引き取りだけでしょうか?

太田記者 殺処分の問題でいえば、いま多くを占めているのが離乳前の子猫です。外で暮らす飼い主のいない猫が産んだ子猫たちが自治体に持ち込まれ、数多く殺処分されています。

離乳前の子猫は、3、4時間おきに人が授乳してあげないと生きられませんので、自治体職員の手にあまり、結果として殺処分されやすい存在なのです。

多くの動物愛護団体が、TNRなどを活用した地域猫活動を通じて、外で暮らす猫を減らすことに尽力しています。また一部の自体では、「ミルクボランティア」といって離乳前の子猫を市民に預け、授乳を手伝ってもらうことで、子猫たちを殺処分しなくてもいい仕組みを構築したりもしています。まずはこうした取り組みに対して、個々人ができる範囲で支援をすることが、殺処分を減らす一歩になるのではないかと思います。

また、これが拙著を出した動機の一つでもあるのですが、一見華やかなペットビジネスの舞台裏でどれだけの犬や猫が苦しんでいるのか知ることも、日本で暮らす犬や猫を幸せにすることに通じていくと考えています。知れば、自分にできること、または自分がしてはいけないことが、見てくるのではないでしょうか。

問題は人間の側の想像力の欠如

――動物愛護法の改正については、根拠があいまいなのに、どんどん決まってしまう、恐ろしい現状をあばいてくれました。人間の法律だったら絶対にありえないことなのに、どうしてペットだとそれがまかり通ってしまうのでしょう?

太田記者 「被害」を受ける、守られる側である動物たちが、人の言葉を話せないことが大きいです。

人が被害にあう、人を守るための法律であれば、その当事者たちが声をあげられます。当事者の声というのは、何事においても力強いものです。しかしこと動物の問題は、当事者たち自身は声をあげられない。そのために人間の勝手がまかり通ってしまうのです。

問題は、人間の側の想像力の欠如だと思っています。動物たちの幸せとはなにか、なにが動物たちを苦しめるのか、一人でも多くの人がしっかりとした知識を得て、想像力を働かせれば、2012年や2019年の動物愛護法改正において起きた理不尽な事態は、少しでも回避できたはずです。

一人一人の自覚と行動が犬猫を救う

――最後に犬や猫と暮らす飼い主さんへ、メッセージをお願いします。

太田記者 皆さま既にご存じの通り、犬や猫などのペットは、私たちにたくさんの幸福を与えてくれます。一度飼えば、ペットのいない暮らしというのは想像できないのではないでしょうか。でも、幸福を与えてくれる犬や猫を飼いたいという気持ちが、場合によっては犬猫を苦しめることにつながってしまうのです。

まず、自分たちが幸せになりたいと思うのと同じかそれ以上に、ペットを幸せにしてあげることを考えてほしいと思います。その上で、飼い主として、または消費者としての行動、選択がひいては、どこか自分たちに見えない場所で犬猫が苦しむことにつながることもあるのだと、常に自覚をしていてほしいです。その自覚、そして行動、選択の変化が、いま犬猫たちをおおっている「闇」を過去のものとする一歩になるはずだと思っています。

――ありがとうございました。

この本で著者の太田記者が受け取る印税は動物愛護団体に寄付されることになっています。まずは本を買って、現状を知ることから始めてみませんか?

著者紹介

太田匡彦・おおたまさひこ

略歴〈太田匡彦〉1976年東京都生まれ。東京大学文学部卒業。朝日新聞社入社。AERA編集部、特別報道部などを経て現在、文化くらし報道部に所属。著書に『犬を殺すのは誰か ペット流通の闇』など。

(インタビュー・文/柿川鮎子)

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