2021-12-31 死んでもあの子はいつも、私のそばにいてくれた【虹の橋を渡る日まで】 虹の橋を渡る日まで連載 虹の橋を渡る日まで 友達から一緒に占い師のところに行ってくれないかと誘われた。10年も付き合っている彼氏とこのままズルズル付き合ってよいのか、それともきっぱり別れるべきか、自分では決められないと言うのだ。 「すごく当たるってお母さんが誰かに聞いてきた占い師さんなの。彼と結婚できるかどうか、一緒に占いに行ってくれない?」と真剣なので、付いていくことにした。 商業施設の一角にある占いコーナーのようなところを想像していたのだが、友達は普通の一軒家に入っていく。 「ホントにココ?普通の家だけど?」 「お母さんの地図だとココみたい。名前も合ってる」 普通の家の普通のインターフォンを鳴らしたら玄関で小型犬がワンワン吠えている声が聞こえた。昔うちで飼っていたヨーキーの吠え声だ。懐かしい。でも、こんな普通の家に住んでいる占い師なんて、あたるのかなあ。 ドアを開けたらエプロンのおばちゃんが犬を抱いてニコニコあいさつしてくれた。 「ミヤガワさんちのお嬢さんね?お母さんから聞いてるわよ。寒いから入って」 出してくれたスリッパには犬のアップリケがついている。 案内された応接間にも犬の写真がたくさん飾られている。占い師のおばさんは普通に犬好きらしい。ちょっとホッとした。 「えーとね、ここに誕生日と名前を書いてね、お友達のあなたもね」 渡されたメモ帳は平塚信用金庫のものだった。こんなんで当たるのかなあ。 メモを渡すとおばさんは奥からなにやら数字が書かれた百科事典のようなものを取り出して調べ始めた。おばさんの膝にのっていた犬はソファーに移動して、静かに休んでいる。 「えっと、あなたは今付き合っている人と結婚できるか?だったわね、えーと、うーん、難しいわねえ。彼とは合わない」けろっと結論を言われて、友人はあっけにとられている。 「まあ、生まれた星回りがナンだから、しょうがないわね。でも、あと半年で良い出会いがあるから、大丈夫よ。今の彼氏さんはちょっと浪費癖があるし、仕事続かないし、たばこ吸うから、喘息のあなたには合わないね」 すごいこのおばさん、じゃなくて占い師様。あたってる! 「あ、あの、先生!彼と別れちゃって、ホント大丈夫なんでしょうか?あたし来年32なんです」 「大丈夫よお、32なんて若い若い!34で結婚して、35で子ども生まれるから大丈夫、大丈夫」 隣で友達が涙ぐんでいる。これできっぱり彼と別れられそうで良かった良かった、とニコニコしていたら、おばさんはこっちを向いて謎の言葉を言い放った。 「あらやだぁ!うちの子と似てる子ねえ」と、肩のあたりを指さした。 「え?何が?このワンちゃんと私が?」 「やだぁ、あなたが犬に似てるんじゃなくてぇゲハハハ」と、天井を向いて笑いだした。そうだ、この年齢のおばちゃん達って、変な笑いスイッチが入るのだった。おばさんが手をひらひらさせて大げさに笑い続けているので、しばらく私も一緒にニコニコ笑っていた。 「あなたのヨーキーちゃんよ。大好きだったんでしょう?今もいるから。マフラーみたいになってるわよぉ、ププッ、ゲハハハ」 ええっ!どうして私がヨーキーを飼っていたって知っているの? 「すっごくかわい子ちゃんねえ!この子によく似てるけど、毛の色は薄いのね。あなたが大好きで、ずっとあなたの傍を離れないのねぇ。いい子、いい子。あなたと付き合う男が離れちゃうのはね、この子が嫌がるからよ、この子が気に入る男じゃないと、あなたは結婚できないわねぇ。ヨーキーって頑固だからねえゲフンゲフン」 衝撃的な言葉をもらって呆然としながらも、友人と私は菓子折りとお金を渡して、別れを告げた。 「お二人とも、気を付けてお帰んなさいね、ミヤガワさん、お母さんに宜しくねぇ」 占い師さんは最後まで普通のおばちゃんだった。 「ありがとうございました」 二人で頭を下げて、玄関を出ようとしたその時、私の足元に毛の感触がした。玄関で靴を履こうとすると、いつもじゃれついてきたうちの子。確かに大好きな犬の感触だった。ああ会いたい、あの子に、そう思ったら涙が噴出した。 私はヨーキーが死んだとき、仕事先のアメリカから帰国できなかったのだ。それが心残りで悔しくて、いつまでも後悔していた。最後を看取ってあげられなかったのが辛くて、ずっと苦しかったのだ。 でも、あの子はいつも、私のそばにいてくれたらしい。足元の、犬の頭の辺りの空間を、そっとなでてみた。手のひらに大好きなあの子の感触が蘇ってきて、歩けなくなった。 (文/柿川鮎子) \ この記事をみんなにシェアしよう! / この記事をみんなにシェアしよう! ボディケア用品からお菓子まで!猫好きな彼女や妻に喜ばれるホワイトデーギフト4選 (3.3) 愛犬がまさかの“犬嫌い”…その原因はどこにあるのか? (3.1) 亡くなったペットは死後も近くにいるの?夢に出たり、ときには帰ってくることも… (2.26) 猫の辞書に「よく噛んで食べる」という文言は無い! (2.26) 注目のグッズ 犬猫どっち派?村松誠の「2021年版 犬猫カレンダー」 ドラえもんに大変身!犬猫用『ドラえもん コスチューム』 ボディケア用品からお菓子まで!猫好きな彼女や妻に喜ばれるホワイトデーギフト4選 【猫クイズ】短足・小型・巻き毛が特徴の「ラムキン」ってどんな猫種? 愛犬がまさかの“犬嫌い”…その原因はどこにあるのか? ぼくたちは猫を育てているのではない。猫に育てられているのだ。 \ PETomorrow をフォローするには下のボタンをクリック! / PETomorrow をフォローするには下のボタンをクリック! Facebook にいいね!する Twitter をフォローする Instagram をフォローする Pinterest をフォローする