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犬のお弔いの日、家の中が花束であふれかえった

虹の橋を渡る日まで

高齢の父が入所している施設のスタッフから、「お父様を乗せてお家の近所を車で通ったら、座席から身を乗り出して見ていましたよ。ご自分の家がわかるんですね」と言われて、実家を手入れすることにした。

田舎の一軒家は、父が入院した当時のままになっている。病院から施設に入所してからは、認知症が進んで娘の私のこともよくわからない。でも、自分が住んでいた家の記憶はまだ、残っているらしい。

通りから見た庭は荒れていて、父は悲しかったのではないだろうか……そう思ったら、いてもたってもいられず、休みを取って実家に帰った。

田舎の実家は広く、庭の雑草取りだけで重労働だった。いくらやっても雑草がしつこくはびこり、大嫌いな虫も湧いてきて、泣きたくなった。

家の外と同時に中の整理も始めた。父がいる間は、母の遺品をなかなか整理できなかった。母の物は、どれも思い出に繋がっていて、捨てるのが苦しい。断捨離なんて簡単な言葉では表して欲しくない、重たく辛い作業が続いた。

父や母がこの家でやろうとしていた思いが、物の中に残されているのが苦しい。誰かをもてなそうと、母が残した大量の客用食器。父が好きだったゴルフ用具。もう二度と使われることのない物から、父や母がやりたかった思いが、じんわり伝わってくる。

積み上げられた父の会社の資料の段ボールを動かしたら、床に大量の犬の毛を見つけた。ふわふわした茶色の毛の塊だった。10年前に飼っていたゴールデンの毛だった。

母の死後、突然、父がブリーダーから犬をお迎えした時は驚いた。世話が心配だったが、私は反対できなかった。母の死によって心に生じた穴を、犬で埋めたかったのだと、わかっていたから。

いざとなったら私が実家に帰って、世話をすればよいと、覚悟してお迎えしたゴールデンはとても優しく穏やかな気質で、手のかからない、素晴らしい子だった。美しい被毛と大きな瞳で、誰からも愛された。父も私も犬のいる幸せを存分に感じることができた。

散歩に行くと、多くの人がうちの子を触りたがる。うちの子も、誰もが自分を愛してくれると信じきっていて、いつも嬉しそうに尾を振っていた。

母が亡くなって一気に老け込んだ父が、犬のお散歩仲間と触れ合い、ご近所づきあいも円満になって、みるみる若さを取り戻したのには驚いた。犬は本当に大きな力を与えてくれるものだと、つくづく感心した。

犬が癌で亡くなった時は本当に辛く、母が亡くなった時はあまり泣かなかった父が号泣していた。犬のお弔いの日、家の中が花束であふれかえった。

今、あらゆる記憶を失ってしまった父に、犬の写真を見せても何の反応もないだろう。でも、このふわふわした毛を見たら、ゴールデンとの楽しい記憶が蘇るかもしれない。うちのゴールデンは、そんな奇跡を起こせる犬だったから。

毛をビニール袋に入れた後、口を開けて少し匂いを嗅いでみた。遠くの方で獣の匂いがして、ゴールデンが庭を嬉しそうに走り回っている姿が蘇って来た。

(文/柿川鮎子)

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