地獄にいる犬は、どこからやってきた犬なのか？

地獄にいる犬は、どこからやってきた犬なのか問題

僕の出身は、宮崎県。

他の地域もそうであるように、宮崎にも弘法大師の足跡を記す施設がいくつかある。中でも僕の住んでいた町には、山のてっぺんに弘法大師の大きな立像が鎮座していて、昔はかなり離れた場所からでも目視することができた。

小学生の頃、学校の遠足でその立像目指して歩かされたことがある。

ヒイヒイ言いながら山を登ると、立像の足元付近にある建物の中に、地獄絵が用意されていたのが印象深い。

ここでは書くのも恐ろしいような地獄の様相に多少引いたんだけど、その中にカラスと混ざって犬がちらほら描かれていた。

この地獄絵だけに限らず、こういう絵には犬が描かれていることはかなり多い。

それにしても、地獄というのは鬼か、地獄に堕ちた人のいる場所。
犬はいったい、どこからやってきたんだろうか……。

なんで地獄に犬がいる？

地獄絵を見れば、そこに堕ちた者は死よりも苦しい痛みを永遠と思える時間をかけて味わうということが視覚的にもよく理解できる。死んでるので、凄惨な拷問をいくら受けても、もう死ねないってのは恐ろしい話だ。

そんな中で平気な顔をしてうろうろしているのは、鬼かカラスか犬ぐらいのもの。この犬はどこから入り込んだんだろう。

野犬が多かったこと、よく学校に犬が入り込んでしまうといったことがあったけど、もしやあのノリだろうか？

地獄絵を色々と見てみれば、犬たちは別に鬼に追い回されている様子もないし、むしろ地獄に堕ちた人々を追い回したり、襲ってもいる。

ということはこれらの犬たちも、いわば地獄の人員なのかもしれない。鬼の飼い犬、愛犬たちという可能性もある。

それから、地獄には畜生道と呼ばれる世界がある。ここに堕ちた人というのは、基本的に現世に未練があったり、誰かを恨んで死んだ人たちだそうだ。
畜生道に堕ちてしまうと、その人は犬や猫などの動物に生まれ変わるとされている。

ということは畜生道は動物を現世に送り出すためのポンプのような役割をしているということが言える。
そのポンプから溢れてしまった動物たちが、たまに他の地獄にやってくるなんてこともあったのかも。

カラスに至っては飛べるし。

地獄に犬、それは仏教の世界に限ったことではない

と、ここまでは仏教の指すところの地獄についての話をしたんだけど、ギリシア神話においては地獄を冥界と呼ぶ。その冥界の番犬といえば、ケルベロスという3つの頭を持つ犬がよく知られている。

以前もケルベロスについてはコラムでちょこちょこっと話をした記憶があるけど、この犬の場合は冥界の王ハーデスのしもべ。

冥界から逃げ出そうとする者を監視しているとされる。頭が3つもあるので、その番犬としての役割はシフト制になっており、1つの頭が眠るとき、もう2つの頭が代わりに見張りをする。

これを繰り返して永遠に眠らない番犬としての役目を果たしているとされていた。

ただ、スイーツが大好物で、これを出されると無心で食べてしまうため、もしもあなたが冥界に堕ちてしまい、外に行きたいというのであれば、ケーキやクッキーか何かを作っておこう。

冥界にその材料があるかどうかは不明だけど。

おわりに

地獄という世界が本当に存在するのかどうかはさておき、仏教においての地獄のバリエーションってのは六道といって無駄に多い。

しかも「こんなの地獄に堕ちない生き方をするのは難し過ぎるでしょ」と思えるほど、地獄行き判定となる事例が多岐にわたっている。

もし地獄があるならば、死後はみんな地獄行きなんじゃないか？　と思えるぐらいシビアなので、個人的には地獄なんて存在してほしくない。

天国もあるんなら嬉しいけど、あそこはあそこでなんか退屈そうだしなぁ。

地獄に行けば犬がいるけど、大体猛犬だし怖いなぁ。

ああ、今から死ぬのが憂鬱だ。ひとまず200年ぐらい生きてから、またあの世のことを考えよう。

文／松本ミゾレ