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マリアが、わが家で過ごす最後の夜

マリアのメラノーマ闘病記その14

マリアがついに息を引き取った2020年6月12日同日朝。昨日まで、ボクが朝一番にすること、それはマリアの何種類もの薬を砕き、粉にすりつぶすことでした。しかし静まり返った今朝は、それをする必要はありません。

     

もう、マリアは生きていないのです。シリンジで流動食を食べることも、水を飲むこともできません。それでも、わが家のリビングルームに横たわっているマリアに、いつものように「おはよう、マリア」と声をかけ、自慢のベルベットのような、今では冷たくなった耳に触れ、撫ぜてあげました。その艶やかな毛色と触った時の感触を、忘れないためでした。

昼間、以前、わが家のゴールデンレトリーバーのナナ(享年10歳8か月)がお世話になったペット葬儀場に連絡し、手配。梅雨時の暑い時期だったので、きれいなまま行かせるため、亡くなった翌々日の6月14日に、最後のお別れすることになりました。そうした事項を、カミサンと、淡々とこなしていたのです。

ペット葬儀場の手配を終えると、この日、診察に行くはずだった、9カ月の間、とてもお世話になり、あるときは勇気付けられ、希望の光を与えてくれた、幕張動物病院の小野先生に電話をかけました。マリアが昨晩、ついに息を引き取りました、と。小野先生は言葉をつまられながらも、「9カ月の間、マリアちゃんはよく頑張りました。ここまで生きていられたのは、家族の病魔と闘う姿勢、協力、努力、介護のたまものでした」と言ってくれました。


幕張動物病院の小野先生

午後1時半、ペット葬儀場からお棺と、その中に入れる純白の布団が届きました。それまで寝かせていた、マリアがお気に入りの、レジーナリゾートでも使われている東洋紡ブレスエアーのマットレスの上から、マリアをカミサンと二人でお棺の中へ。体重は20kgを切っていましたから、重くはありません。でも、そのラブラドールレトリーバーとしては軽すぎる体重が、マリアの病魔との戦いの証だとも思えたのです。近くで見守るララは、もしかしたら、マリア用の新しいベッドが届いたと思っているかも知れません。ララの表情からは、まだ、すぐそばで眠るように横たわっているマリア姉さんが、もうこの世にいない実感がないようにも思えました。理解するには、時間が必要でしょう、きっと。

お棺にマリアを移し、横にさせ、蓋を閉じたあと、その上に、マリアもお気に入りだったはずの、元気だった頃の笑顔の写真と、マリアの連載”ペットフレンドリーカー本郷研究室”「CT DOG」の約5年分をまとめ、マリアが表紙を飾った、中身がマリアとララだらけのムック「愛犬と乗るクルマ」、マリアがいつも着ていたDOG DEPTのドッグウエア、そして朝、ボクが食べる予定だった、マリアが大好きだったクリームパンやおやつとお花を置きました。意外なことに、食いしん坊のはずのララは、それを欲しがったり、食べたりはしません。マリアのパンだということを、犬心に理解し、我慢していたようです。偉いね、ララ。

その日の夜、カミサンがふと、「改めて悲しみ、喪失感より、安堵感があるのが不思議」と、こぼしました。ボクもまったく同感でした。シリンジで流動食をあげても食べられず、苦しそうにしているマリアが楽になったことのほうが、マリアを失った悲しみを上回るのです。このままこの状態がずーっと続くほうが、マリアにとって苦痛だからです。こう言っては何ですが、なんだか、ホッとしていたりする自分がいたのです。

明後日、マリアの姿とはお別れです。夜、カミサンと二人でお棺に入ったマリアのそばにいると、ふと、マリアが生前、ボクにわんわん語ってくれた「マリアの十戒」の最後、其の十のマリアの想いを思い出しました。

「マリアはこの家の子になれて本当よかったと感謝している。そして家族みんなが大好きだよ。マリアの最期は、できればこの家でパパやママの元で迎えたい。パパやママは「もう見てはいられない」、「ここにいたくない」なんて絶対に言わないと思うし、そのときはずっとそばにいてくれると信じているけれど、マリアがこの世にいなくなっても深く悲しまないでほしいんだ。マリアは鹿児島の崩壊した繁殖場から奇跡的に助け出され、この家に来れたことだけでも奇跡。もっとずっと前に死んでいても決して不思議じゃない。だからマリアの犬生がたとえあと何年でも、どんな犬よりも幸せなんだ。

もう一度、言うよ。

マリアがいなくなってもいつまでも悲しまないで。マリアはパパやママを悲しませるために、はるか鹿児島からこの家に来たんじゃない。ナナ先輩の代わりに、この家に幸せを運んできたんだと思ってる。だってマリアはナナ先輩が亡くなった頃に生まれ、この家に来ることを運命づけられたレトリーバーなんだから。

最期はそう信じて、ひと足先に虹の橋を渡って天国にいくよ。マリアはパパやママがこれからもずーっと幸せに暮らしていくことが望みなんだ。悲しい顔なんか見たくない。マリアに見せてくれたやさしい笑顔を、天国からずっと見ていたいんだ」。

ボクたちは、そんなマリアの気持ちに、出来る限り、応えてあげられたと思っています。マリアの十戒の其の十のマリアの想いを、後悔することなく、果たせたと信じています。だから、マリアが望まない悲しい顔など、涙など、マリアに見せません。


マリアの新しいベッドが届いた2020年1月撮影

思い起こせば、2007年9月28日。もうすぐ10月だというのに、東京の気温が最高32度を記録したその夜、鹿児島の崩壊した繁殖場でずっと一緒だった2頭のラブラドールレトリーバーが、鹿児島発のJAL最終便で東京羽田空港に到着しました。そしてわが家に引き取られたのが、鹿児島のボランティアの人達が「必ず幸せになるんだよ」という想いと希望を込め、首輪に小さな向日葵(ひまわり)の花飾りが付けられていた、小さく色白のラブラドールレトリーバーのマリアでした。


鹿児島のエピソードを知る方からひまわりの生花が届きました

2020年6月13日。約13年もの間、わが家の一員、わが家の中心として”一夜にしてわんダフルライフ”を過ごし、一緒に旅し、遊び、一緒においしいものを食べ、一緒にたくさんのお仕事をしてきた、一緒にバーのカウンターでカクテルを飲んだことだってある大好きなマリアが、わが家で過ごす最後の夜。

静まり返ったリビングルームで、マリアが安心して、この世に未練を残さず、天に登っていけるように、横たわったマリアの傍らで1杯やりながら、マリアの記憶の中に永遠に残るような、マリアに負けない笑顔を見せてあげることにしました。

つづく

追記 そんなマリアとの約束は、PETomorrowマリアの十戒 其の九/其の十「マリア、本当に、ありがとう。また会おうね。」に記されています(2020年8月23日公開)。 https://petomorrow.jp/news_dog/122018

写真 青山尚暉 雪岡直樹

文:青山尚暉

ドッグライフプロデューサー、モータージャーナリスト。雑誌編集者を経験した後、フリーのジャーナリストに。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員も務める。愛犬家でもあり、愛犬とのドライブ術、ペットと泊まれる宿に関しても詳しく、Web、専門誌、一般誌、ラジオなどで「愛犬との快適安心な旅スタイル」を提言中。現在、ラブラドールレトリーバーのマリアを149カ月で見送り、ジャックラッセルのララと暮らしている(どちらも保護犬)。PETomorrowのほか、レスポンス、カートップなどでも愛犬とクルマ関連の記事を連載中。20164月には、愛犬とのドライブ旅行の集大成となるムック本『愛犬と乗るクルマ』が発売されている。輸入車の純正ペットアクセサリーの企画、開発、プロデュースにも携わる。愛車はシニア犬の乗降性にもこだわった、愛犬仕様にアレンジしたステーションワゴン。

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