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田舎の家の庭には愛犬が埋められている。

犬が死んだ朝

義両親が亡くなり、残された田舎の家は物であふれかえっていた。姑は物を大切にする人で、包み紙ひとつ大切に丸めて棄てなかったから、うすうすこうなるだろうとは予想していた。でも、遺品整理がこれほど大変なものだとは夫も私も想像していなかった。

もとは農家の一軒家だったから、本宅とは別に農機具を入れていた離れもある。土間だった台所は、わが家のリビングより広くて寒く、ここで毎日炊事をしていた姑は、さぞ苦労しただろう。

夫の妹はさっさと高価な着物や宝石類、使える家電などを持ち帰り、家の中にあるのはほぼ不用品だ。最後は業者に任せるとして、とりあえず必要な品だけを持ち出すことにした。

私にとっては他人の家だから、必要な書類以外は、すべてゴミ。ゴミは燃えるゴミ、燃えないゴミ、資源ゴミの3つに分別するだけで簡単だ。でも、夫はぐずぐずしている。「小学校の時の通知表が出てきた」とか「これ初めて買ってもらったグローブ」といちいち手にとっては話しかけてくる。

「そんなんじゃ、何年かかっても片付かないよ?このままこの家を放置しておいたら、税金とか払わなきゃいけないんだよ?売って妹さんと折半するって決めたんだよね?」と、夫を責めてしまった。

夫は「まあ、そんな怒るなって、ねえ、そろそろ昼飯にしようよ!買ってきたお弁当、外で食べよう」と、もう飽きたようだ。

庭に出て、舅が手入れをしていた藤棚の下のベンチに座って弁当を広げる。11月なのに妙に暖かく、日差しが照りつけて、風が心地よい。

荒れている庭の隅に、菊が咲いていた。主が居なくなって、誰も見ない庭に、こうして花が咲き続けている。この家を愛した義両親の気持ちを想うと、切なかった。

夫がふと菊の方を指さして、「あの辺に犬を埋めたんだ」と言う。夫が生まれてすぐ、庭に迷い込んできた雑種犬で、きょうだいのように育ったのだが、8歳でフィラリアで亡くなってしまった。「犬が死んだ日からしばらく学校に行けなくて、埋めたあの辺りで、しゃがんでずっと泣いてたんだ」と子どものころを振り返る。

「この家を売ったら、犬の骨はどうなるんだろうなあ。掘り返されてしまうのかな」。夫は犬の骨の行方を心配しているが、本当は懐かしい実家で暮らしたいのだ。しかし、雪が降れば陸の孤島となるこの村には、病院もスーパーも無い。今はよくても、これからもっと歳を取ったら、生活は厳しくなる。

「犬の骨だけ少し掘り出して、持って帰って、ペット霊園に納めたら?」と、私は夫の気持ちに気づかないふりをした。

ふと、庭の隅で骨になった愛犬が、ずっと夫の帰りを待っていたのだとしたら・・・・・・そんな考えが浮かんで、弁当の箸がとまる。ちょこんとお座りしながら、耳を傾け、夫の帰りをじっと待っている雑種犬の可愛い姿。

「この家なら、大型犬が飼えるわね」と言ってしまい、自分でもびっくりしている。庭に埋められた犬の力に、私は引き寄せられているのだろうか。

文/柿川鮎子
明治大学政経学部卒、新聞社を経てフリー。東京都動物愛護推進委員、東京都動物園ボランティア、愛玩動物飼養管理士1級。著書に『動物病院119番』(文春新書)、『犬の名医さん100人』(小学館ムック)、『極楽お不妊物語』(河出書房新社)ほか。

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