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不安定な今こそ、犬の飼い主が読むべき1冊「友だち」

友だち【ブックナビ】

当たり前の日常がたったひとつのウイルスで崩壊する。不安定で不確かな私たちの社会や生活を振り返ると、犬の確かな存在感や、犬と人の愛情と強い絆のありがたさは、何にも代えがたいもののように感じられる。

本は読むべき時を選ぶが、まさにこの本は犬を飼っている人が今、読むべき一冊だと思う。不確かな人間と、確かな命を生きる犬との対比を楽しむのに、これほど適した時は無いだろう。

グレートデンと人間の対比が面白い

この本は主人公の「わたし」が自殺した男性の「あなた」へ、現在や過去の出来事について、自分の気持ちを吐露するかたちで進んでいく。「あなた」は高齢の大型犬・グレートデンのアポロを飼育していた。「わたし」は「あなた」の三人目の妻から犬を引き取って欲しいと頼まれる。

「わたし」はペット不可のアパートに住んでいたため、許可を得るために交渉する。もともと猫派の「わたし」が大型犬と散歩をしていると、これまで出会わなかったような、さまざまな人に出会うことになる。こうした大型犬との生活で体験する出来事は、犬の飼い主ならば思わず納得して応援したくなるエピソードばかりだ。

“いつだってわたしは他人の注目を浴びたくないと思っているが、用をたすときプライバシーがないのが—アポロは少しも気にしていないが—わたしにはなかなか辛いのだ。最悪なのは、後片づけをしているときにジロジロ見られることで、なかにはそれを面白がる人たちもいることである。彼のすぐ横にわたしがバケツとシャベルをもって立っている”

犬を飼っていれば、「その通り」と叫びたくなるリアルさに満ちている。だからこそ、この小説の最後のどんでん返しに圧倒されて、読者はすっかり騙されたような気持になるのかもしれない。正義感が強く潔癖症の読者ならば、受け入れられないと感じるだろう。

「わたし」はとても教養があり、映画や古今東西の小説から多くの文章やエピソードを引用している。この引用部分を拾って、原本を読むのもきっと楽しいと感じさせるセンスもある。たいへん知的な人物なのに、心はいつも揺れ動いていて、もやもやとはっきりしない印象なのである。共感したくてもできない、漠然としたもどかしさが、つきまとう。

避けて通れない死の別れ

そんな「わたし」に寄り添う存在が、グレートデンのアポロだ。アポロの印象はくっきりとして力強い。6歳と高齢のアポロは大型犬に多く発生する関節炎の症状もある。また、元は保護犬という、なかなか不幸な生い立ちなのに、辛い運命を受け入れ、飼い主に寄り添う。しかし、大型犬は小型犬に比べると寿命が短い。

“彼を救ってやったあとで、なぜこんどは彼が苦しむのを—苦しんで死んでいくのを見守り、そのあと、彼なしでひとり取り残されなければならないのか”

犬を飼っている人ならば絶対に避けて通れないのが死による別れだ。一緒の時間が楽しければ楽しいほど、辛く苦しい時が来る。誰もが「自分が死んだらこの子はどうなるんだろう」と想像してゾッとするし、必ず来る「看取らなければならない日」を覚悟している。

なぜこんなに辛く苦しいのがわかっているのに、犬を飼ってしまうんだろうと、誰もが思う。以前、若い獣医師は私に「一番いいのは、飼わないことですよ」と断言した。まったくその通りなのに、愛くるしく、まっすぐな瞳の持ち主と暮らしたくなる。

“ああ、ごらん、蝶々だ。すごく大きな群れが宙に浮かんで、小さい白い雲みたいに芝生を横切ってくる”

芝の上に静かに横たわる犬の上に降り注ぐように飛ぶ蝶の群れ。犬を飼っている人も飼っていない人も、最後の場面で涙腺が決壊するはず。不確かさと確かさを対比させ、フィクションとノンフィクションが上手に組み合わさった、不思議な魅力に満ちた一冊。不安定な今こそ、犬の飼い主さんはぜひ読んで欲しい。「あの時、この本を読んでいて良かった」と思える日が、いつか必ず来るはず。

文/柿川鮎子

「犬の名医さん100人データーブック」(小学館刊)、「犬にまたたび猫に骨」(講談社刊)、「動物病院119番」(文藝春秋社刊)など。作家、東京都動物愛護推進員)

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