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犬と私とどっちを取るの?って言わないね【虹の橋を渡る日まで】

虹の橋を渡る日まで

祖父が猟犬を繁殖させていて、小さい頃から犬の世話をしてきた。祖父は「お前は筋がいい」と可愛がってくれ、繁殖の仕事を引き継いでもらいたいと考えていたようだが、父が猛反対して、祖父が亡くなってからは猟犬の仕事はやめてしまった。

祖父の仲間たちは「孫のお前に期待していたんだぞ」と口々に惜しがったが、猟犬の需要自体が減ってしまって、犬を繁殖させても売るのが難しい。祖父が亡くなった後、最後の一頭が亡くなってから、犬のいない生活が長く続いた。

時折犬の散歩をしている人を見ると、子ども心にも爺さんを思い出して胸がいたんだ。でも、学校の友達と遊ぶのに忙しかったし、ゲームや彼女とのデートに夢中で、犬のことはほとんど忘れていた。

それが、ワーキングホリデーでオーストラリアに行って、犬好きの血が騒ぎだしたのだ。ステイ先の牧場に大型の猟犬がたくさんいた。オオカミの血を受け継いだという犬たちは美しく、利口で、祖父が愛した猟犬を思い出し、懐かしくてたまらなかった。

すっかり犬に魅了されてしまい、帰国してすぐに、祖父の古い友人から犬を譲ってもらった。「爺さんの孫だから、特別にいい犬を譲ってやる」と言われて手渡された子犬は、幼いのにふてぶてしいほど堂々とした、武士のようだった。虹の橋を渡る日まで、私の人生を賭けて、この犬を幸せにしてやると誓った。

武蔵と名付けた日本犬は、飼い主である私に絶対服従の犬に育った。「犬は子犬時代が勝負、徹底的に社会性を身に付けさせろ」という祖父の教えに従い、付きっきりで世話をし、プロの訓練士も入れて、飼育しやすいようなしつけをした結果、都会のマンションでも普通に飼える犬に育った。

しかし、気質は一般的な愛玩犬とは異なり、私以外の人間に媚びる仕草は全くしない。親しくなった女性が家に来て、かるく私の腕をぶつふりをしただけで、さっと私を守って、ううっと低く威嚇するような声を出した。たいていの女性は武蔵を嫌がり、「犬か私かどっちかを選んで」と離れていった。

今、付き合っている彼女は犬が苦手で、「小さい頃、犬に追われてお尻に咬みつかれたの」と本当にお尻の傷跡を見せてくれた。確かに犬の歯型で、この子とも続かないかなあと思っていたのに、気が付いたら付き合って一年が経っていた。

彼女が私の家に来ると、まず、武蔵に犬のクッキーを与える。武蔵も一応尾を振ってお菓子を歓迎し、食べたらさっさと自分のケージに戻る。今のところ、二人の間は緊張関係にあるライバルという感じだろうか。互いのことが気になるけれど、一線を越えない付き合い方をしている。

お酒が入って気が緩んだのか、ふと「犬と私とどっちを取るの?って言わないね」とうっかり言ってしまった。「ちょっと、前の彼女たちと比べないでよね」と彼女は私をにらんで、「武蔵はコワいけど、あなたが好きな犬を、私が好きになれないはずがないでしょう」ときっぱり言いながら赤ワインをくいっと飲み干した。

潔く断定した言い方がとても気に入ってしまい、「惚れ直した」と正直に告白した。犬と彼女の距離がもう少し近くなったら、一緒に暮らしてみようかと思っている。

文/柿川鮎子

「犬の名医さん100人データーブック」(小学館刊)、「犬にまたたび猫に骨」(講談社刊)、「動物病院119番」(文藝春秋社刊)など。作家、東京都動物愛護推進委員)

 

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