子牛並みの体格を持つ妖精の番犬「クー・シー」の不吉な性質
子牛並みの体格を持つ妖精の番犬「クー・シー」の不吉な性質
世界各地には数々の神話や民間伝承が存在し、それらの中にはさまざまな幻獣、神獣が登場する。
日本における妖怪も、そういった類の一種である。
さて、この不思議な獣たちの中には、私たちがよく知る犬や猫の姿をしているものも少なくない。
今回はその中から、スコットランドに棲むというクー・シーという犬の妖精の話を紹介したい。
伝説の妖精番犬クー・シーとは?
クー・シーとはちょっと変わった名前の妖精であるが、これはケルト地方で用いられていた“ゲール語”の指すところの、犬の妖精という意味を持つ言葉だそうだ。
このクー・シー。全身は緑色の体毛で覆われているというので、なんとも妖精っぽいカラーリングだ。
その役目は妖精たちを守ること。つまり自身も犬の妖精でありながら、他の妖精を守護するための番犬という立場にあたる存在ということになる。
その体格は非常に恵まれており、ちょっとした子牛に匹敵するほど大きいとも言われているので、実在しているのならば相当な迫力があるはずだ。
番犬であるためか非常に獰猛な一面もあるようで、クー・シーに襲われた人も過去には何人もいたらしい。
そして、一度狙われれば容易に逃げ切れるものではなく、まさに遭遇したら死をも覚悟しなければならないという恐ろしい番犬なのだ。
出自こそ違うが、この辺は冥府の番犬ケルベロスあたりと似たような役目を担っているのかもしれない。
しかもクー・シーは飛ぶように走り、足音を相手に察知されることもない。まるで忍者のように正確に相手を追跡し、仕留めるというわけだから恐ろしいと感じる他ないのである。
凶暴なクー・シーも同じ犬には案外弱い?
さて、そんな恐ろしいクー・シーも、どうやら無敵ではないようだ。普段妖精の領域を守護している彼は、しばしば誤ってその領域に足を踏み入れた人間を追い回すこともある。
しかしそんなとき、人間たちが武装をしていたり、もしくは犬を連れているとなると少々勝手が悪い。
クー・シーはかつて、侵入してきた人間が連れていた犬(恐らく猟犬なのだろう)ともみ合いになったことがあるなんて話もあるのだから面白い。
さらにはこの戦いの結果、なんとクー・シーが敗北し、そのまま逃げていったという。
妖精の番犬で、前述のように体格も素晴らしいクー・シー。
そのクー・シーを敗走させるとは、なかなか優秀な犬を連れた人もいたものだ。というか、妖精ともみ合いになって勝っちゃう犬って、そっちのほうがよっぽど妖怪じみている……。
とはいえ、この犬の飼い主はまさに幸運だ。なにせその犬がいなければ、恐らくクー・シーの餌食となっていたのだから。
おわりに
ちなみに、クー・シーには休暇制度があるようだ。しばしば彼は妖精の領域から暇をもらい、首輪を外してもらってはお気に入りの岩場で寝泊りを楽しむという。
クー・シーにとってはその岩場が、私たちで言うところの軽井沢みたいな場所なのかもしれない。
こうしてたまに別荘でくつろぎ、英気を養ってはふたたび番犬としての仕事に従事するクー・シー。
なんとも働き者の犬である。
文/松本ミゾレ


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