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避難所で奇跡をおこしたゴールデン・レトリーバーのスヌーパー

避難所で奇跡をおこしたゴールデン・レトリーバーのスヌーパー

東日本大震災から今年でもう8年。復興作業はまだ続いていますが、犬と人の奇跡のような実話が紹介されました。「スヌーパー 君がいた40日」(丹由美子著、山と溪谷社刊、定価1200円+税)です。ゴールデン好きにはたまらない、学ぶところの多い一冊です。

今でこそ、同行避難が当たり前の時代となりましたが、東日本大震災の2011年当時は、犬が避難所で暮らすのは禁止されていました。その中で、石巻の渡波小学校では、ゴールデン・レトリーバーの10歳の男の子、スヌーパーが被災した家族と一緒に暮らしたのです。それは奇跡のような40日でした。

スヌーパーと出会った、多くの被災者の実話には胸を打たれます。スヌーパーが家族と一緒に避難所で生活することが可能だったのは、人々がスヌーパーを必要としたからだと気づくのです。

また、この本は犬の飼い主さんにとって、動物を連れて避難する時に必要なノウハウをたくさん教えてくれます。スヌーパーがたった一回しか吠えなかったこと。飼い主はスヌーパーのトイレを遠くまで捨てにいったことなど、しつけとマナーの配慮が必要であると、教えてくれました。

確かに被災した時のためにも、しつけとマナーは必要だと、飼い主はだれもが感じています。特に、犬の無駄吠えは、普段の生活でも迷惑です。でも、何となく「被災した時はお互い様」「吠えても仕方がない」と自分に甘んじてしまう飼い主さんは、意外と多いのではないでしょうか。

スヌーパーは、飼い主さんがあべ動物病院の阿部容子先生のもとで人間社会で暮らすための大事なことを学んだ犬でした。そしてゴールデンらしい寛容な心と、優しい気質をもっていました。

人々の心を慰め、愛情深く接してくれる大型犬の存在に、多くの被災者がなぐさめられ、生きる勇気をもらったのです。あの未曽有の大災害の中、命からがら助かった人々の心の傷を、スヌーパーが癒してくれました。

ただいてくれるだけで、力になる存在。ゴールデンの大きな身体にいっぱいつまった愛を、ぞんぶんに感じることができる一冊です。

最後、スヌーパーが悪性腫瘍で亡くなるシーンはとても人ごとではなく、飼い主の康子さんの気持ちになって号泣必至なので、電車の中で読むには注意が必要です。

スヌーパー、ありがとう。たった一頭の犬がくれた愛と力の大きさを、私達は忘れません。そして、普段のしつけの大切さを再認識して、今日から震災に備えた対策をしていきたいと思います。

文/柿川鮎子

「犬の名医さん100人データーブック」(小学館刊)、「犬にまたたび猫に骨」(講談社刊)、「動物病院119番」(文藝春秋社刊)など。作家、東京都動物愛護推進委員

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