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犬猫殺処分施設で働くということ。実際に働く女性を描いた「犬房女子」

犬猫殺処分施設で働くということ。実際に働いた女性を描いた「犬房女子」【ブックナビ】

熊本県熊本市には東区戸島町に「熊本県動物管理センター」、東区小山には「熊本市動物愛護センター」があった。この二つの施設は保護・捕獲した犬や猫を扱う行政施設だが、行政機関としての活動方針には大きな差があった。

管理センターでは収容した動物のほぼ全頭が殺処分された。愛護センターでは殺処分と同時に積極的な譲渡活動を行い、殺処分ゼロをめざしていた。この二つの施設で、実際に働いた女性の姿を紹介したのが「犬房女子」(藤崎童士著、大月書店刊)である。

犬や猫が収容施設でどのような扱いを受けているのか、そこで働く人々は何を考え、給料はどれぐらいで、どんな働きをしているのか、職員募集の方法など、かなり赤裸々に書かれている。

殺処分施設の劣悪な環境や、そこで死を待つ犬や猫の悲惨な現実については、あまりにも辛すぎて、通して読むのが切なくなる。目をそむけたくなる内容だが、救いはある。それはこの現状を変えようと立ち上がってくれた若い女性たちの、その真摯な姿である。

社会には様々な矛盾があり、それを是正しようと戦う人と、戦わずに流されてしまう人がいる。逃げずにとどまり、前向きに戦うことは、正義なのだ、と、きちんと教えてくれる本は意外と少ない。この本は、普通の人であっても、社会や組織を変えることができる力をもっている、という希望をくれた。

もちろん、この本で初めて殺処分の現場を知る人も多いだろう。犬や猫の悲惨な現状が公表されて、矛盾を感じた人が増えれば、収容施設の問題は改善していく。そのためにもぜひ、ペットを飼育している人は手に取って読んで欲しい。

殺処分に立ち会った主人公は言う。「かわいそうだけれど、かわいそうっていうそのときの感情で終わらせてしまったら、あの子たちがもっとみじめになっちゃう気がする」。焼かれて骨になる姿を見守る主人公は、ゴミ袋に骨を入れるところまで、きちんと見届ける。こんな切ない仕事があるだろうか。

多くの道のりを経て、2017年、熊本県動物管理センターは熊本県動物愛護センターへと生まれ変わり、殺処分数も大幅に激減した。その陰で本当に犬や猫のために力を尽くした女性たちのことを、私達は忘れない。

「犬の名医さん100人データーブック」(小学館刊)、「犬にまたたび猫に骨」(講談社刊)、「動物病院119番」(文藝春秋社刊)など。作家、東京都動物愛護推進委員)

文/柿川鮎子

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