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神さま、犬のいる世界をありがとう【虹の橋を渡る日まで】

虹の橋を渡る日まで

秋の終わりの海岸は、他の季節よりも穏やかでゆったりした時間が流れている。ワンコもゆっくりたっぷり波打ち際で遊び、疲れて私の腕の中でうつらうつらしはじめた。太陽があたりを染めながら落ちていく、この黄金の光の中で、私と犬だけが世界中の幸せをひとりじめしている。

落ちていく夕日を眺めながら、腕の中の大切な宝物が、いつか私の手元から離れて、神様に帰さなければならない日が来ることを感じていた。まだ3歳の元気盛りだけれど、いつかは必ず死を迎えなければならない。今が幸せであればあるほど、悲しい結末が頭をよぎる。

犬を飼い始めてから、わかったことがある。犬のいる幸せは不幸なのだ。幸せであればあるほど、それを失う時の恐怖は大きい。必ずくる死の恐怖と引き換えに手に入れた今の幸せは、実にどっしりと重たい幸せだ。

山で育った私は、海の見える土地で犬と暮らすのが夢だった。この町でアパートを借りた時、私は人生ではじめて幸せを感じたと思う。一人で探した、実家から遠く離れた小さな部屋。家族の束縛と、恋人との確執から、やっと抜け出せた。

がらんとしたアパートの電気をつけた時に感じた幸せは、今より軽い幸せだった。命の重みが無い、自分だけの軽くて薄い幸せ。犬が来て、私の幸せは重たくなった。ずっしり重く、手ごたえのある幸せである。何より、日常生活が喜びにあふれている。ワンコは毎日食事をして、トイレをして、散歩をして、遊ぶ。その繰り返しの中で、思いもかけない愛と笑いをくれるのだ。

アパートは古く、どこからか虫が入ってくる。セミを口にくわえてブルブル音をさせながら、枕元に持ってきたり、天井のクモを真剣に狩ろうとする姿を見ると、お腹の底からおかしくて、楽しくて、愉快で、幸せだ。友達は「そんなの、犬を飼っていればあたりまえだよ」と言うけれど、そのあたりまえが、愛しくて愛しくてたまらない。

そんな愛しい犬と別かれる日が来る。先に虹の橋を渡ってしまう。それを思うと、夕焼けの海岸で、私は声を出して泣きたくなる。打ち寄せる、白い波の中に溶けてしまいたいほど悲しい。確実に来る、絶望の日を、私は乗り越えられる自信がない。

腕の中のワンコはいつのまにか目を開けて、波の音を聞いていた。そして、澄んだ瞳で私を見ると、ゆっくり尾を振った。先に逝くけれど今は一緒だよ、と言ったような気がした。

ありがとう、神様。神様は私にこんなすばらしい子を与えてくれた。いつかあなたに帰す日がくるけれど、その時まで、私はワンコと一緒に、幸せに暮らします。夕日が完全に落ちるまで、海の風にあたってから、ふたりのお家に帰りましょう。ありがとう。本当にありがとう、神様、犬をのいるこの世界を創ってくれて、ありがとう。

文/柿川鮎子

「犬の名医さん100人データーブック」(小学館刊)、「犬にまたたび猫に骨」(講談社刊)、「動物病院119番」(文藝春秋社刊)など。作家、東京都動物愛護推進委員)

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