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野良猫と自分は同じ釜の飯を食った同志である【虹の橋を渡る日まで】

虹の橋を渡る日まで

長男の嫁とうまくいかないと母がうちにやって来た。泊る所も金もないと言う母に、妻が同情してしまい、仕方なく家に入れたが、それが間違いだった。封印していた子供の頃の記憶がよみがえってきて、苦しくて仕方がない。

父と離婚してシングルマザーだった母は、息子二人を放置子にした。「お母さんが働かないとあんたたちは飢え死にするからね」と言われて育ったけれど、実際は男と旅行に行ったり、パチンコで給料を使い果たしたり、母親というよりは女だった。

幼かった兄弟にとって、食べ物が無いのが一番辛かった。給食が頼みの綱で、夏休みになるとげっそり痩せた。今でも食べ物を上手にシェアできない、トラウマがある。妻はそんな自分を、上手にフォローしてくれている。

小学校3年生の夏休みの夜、公園に行くと白い紙皿の上に茶色いスナックが置いてあるのを兄が見つけてきた。カリカリして油臭く、味も薄いけれど、食べられないことは無い。食べた後、水を飲むと腹が膨れた。

当時は子どもだったから、お皿の上のスナックが何か、わからなかった。ただ、白い紙皿に置かれていたから、危ない食べ物ではないとは感じていた。あれは誰かが置いた猫のエサだ。兄と二人で、野良猫と食べ物を奪い合って、飢えをしのいでいたのだ。

兄も自分も貧乏から抜け出すために、必死で底辺から這い上がってきた。昔の虐待の記憶は、きっちり封印されていたはずなのに、母親の登場で、嫌なことばかり思い出す。

今朝、テレビで飢えたアフリカの子ども達が登場したので、幼い子供を飢えさせて、どんな気持ちでいたのか、母に聞いてみた。

「俺も兄貴も、アフリカの子どもたちとおんなじで、食べ物がなくて、いつも腹を減らしていた。夜、公園で猫おばさんが置いていく、野良猫のエサを盗んで食べてたの、知ってる?」と。

母はびっくりした後、言い放った。「まさかあ、嘘でしょう!あんたたちは食が細くて、全然食べない子だった」とゲラゲラ笑ったのだ。

自分たちには辛すぎる過去も、母にとっては笑いごとなんだな、と、思った瞬間、気持ちがすっと冷めた。目が覚めた気がした。

母は自分が子どもを放置した自覚なんて無い。俺たちの「飢え」なんて、嘘だと思っている。母から詫びのひとつでももらえたら、と期待した自分が悪かった。甘かった。

母から、一緒に住まわせてもらって、ありがとうと感謝してもらいたかった。もしかすると過去を詫び、母から少しの愛情を得られるかもしれないとも思った。それは間違いだ。

母の姿を見ていると、過去の辛い出来事を思い出してしまう。兄も同じように感じたから、母を追い出したのだろう。兄嫁が悪いと母は言っているけれど、多分、兄が母を嫌がった。

「来週でこの家を出てってもらうから」と母に宣言した後、ずっとやりたかったことを始めようと決意した。妻は大賛成だった。

まず、保健所に電話を入れて、問い合わせてみた。ともかく飼い主がいなくて、困っている野良猫を一頭、助けたいのだが、どこへ行けば譲渡してもらえるか、と。

電話口に出た保健所の職員から、なぜ今、お迎えしたいのか、その理由を聞かれたので正直に答えた。

「自分は子どもの頃、公園で、野良猫のエサを盗んで食べて、猫を飢えさせてしまいました。それがずっと心に残ってて、後悔しているので、今度は自分が野良猫に恩返ししたいのです」と。

でも、何だかちょっと、お涙頂戴的で恥ずかしかったので「まあ、同じ釜の飯を食った同志って感じですかね」と冗談っぽく付け加えてみた。

保健所の係員はよく理解していない様子だったが、それでも譲渡会の日程と持っていく物を丁寧に教えてくれた。これで、猫へ借りを返せる。猫には自分がもらえなかった、無償の愛ってやつをたっぷり与えて、少年時代の自分と決別するつもりである。

(文/柿川鮎子)

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