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イノシシ退治をした猫の塚のある我が家

虹の橋を渡る日まで

この借家に引っ越してきて3ヶ月経った頃、妻が私に

「視界の端に猫が出る」

と訴えてきた。どうも先月ぐらいから視界の端に陰のようなものが出始め気になっていたらしいが、それが徐々に猫のような姿になってきたという。

視線を動かすと消えてしまうが、スマホや本に目を戻すとまた現れて、最近はそれがクッキリしてきたようで、集中できずにイライラするそうだ。ああ、妻が最近何だかイラついて見えていたのは、そのせいだったのかと納得した。

「見えてるだけじゃなくて、何だかその猫が手を伸ばしてチャイチャイしてるような感じがするの」

そんな馬鹿な、とは思うが、見えている本人にしかわからないことだし、妻が猫好きだからそう見えるのだとは思うが、まずは目医者を勧めた。

医者嫌いな妻はしぶっていたが、とりあえずネットで近所の評判の良い眼科を探して、予約を入れたが、病院は混んでいて、受診は週明けになった。

土曜日の午後、妻とのんびりお茶をしているところに、借家の管理会社から電話があり、これから訪ねてよいか?ということだった。断る理由もないのでのんびり待っていると、管理会社の社員は若い女性で、手土産らしい手提げ袋の他に、小さい袋を持参していた。

「いきなり申し訳ございません、ひとつ急ぎでお願いしたいことがありまして」

手土産を渡されると、早々に話し始めた。急なお願いとは何だろうかと少し身構えていると、女性は、

「いえいえ、そんなに難しいことではなく、一応こちらに住まわれる方にはいつもお願いしてあることなんです」

と顔を赤くしながら、

「お庭の隅の石に、これをお供えしてもらいたいのです」

そう言って女性が小さい袋を差し出した。

妻が受け取ると、

「マタタビです」

と不思議なことを言う。

女性は両手でバレーボールくらいの大きさを作って

「あの、おたくに、これくらいの石がお庭の隅にあるはずです。それ、先祖が飼っていた猫のお墓なんですよ」

戦前までこのあたりの大地主の邸宅があった。大地主が手放したところに6軒の借家が建ち、そのうちの1軒が我が家だった。女性によると、まだ邸宅があった頃に、死んだ飼い猫を庭の西の端に弔った、という。

私たちの住まいは、その西の端にあり、確かに石がある。大地主の子孫は代々猫の供養をしてきて、この女性も地主の子孫のひとりらしい。そして、今回こうやってお願いに来たそうだ。

「代々供養なんて、よっぽど可愛がられた猫ちゃんなのね」妻は感心している。

「はい、それもあるんですが、先祖の遺した日記を見ると、猫に孫が救われた、とか、あるんですよ」

「賢い猫ちゃんですね!何をしたんですか?」

「えっと、イノシシを退治したそうです」

イノシシ退治……!?こちらには構わず女性は続ける

「他にもいろいろあったようですが、とにかく猫を守り神として、大事にしてきて、亡くなった後、先祖代々、見守ってもらえるよう、庭の隅に弔ったそうです」

「実はこの役目はこれまで私の母がやっていたのですが、急に入院したり、前社長の祖母が引退してゴタゴタもありまして、こちらに伺うのが遅くなってしまいました。本当は、猫の命日の先月に来なければいけなかったのですが……

「やだ、私の目の端に現れるのって、その猫じゃないのかしら」

怪訝な顔の女性に、妻が自分の目のことを話した。

「マタタビが来ないから、怒ったのかしら?」

「そうだったんですか?すみません!祟るような猫では無いと思うのですが、もしそうでしたら、ほんとに申し訳ありません」

女性が頭を下げたので、あわてて、そういうつもりで言ったんじゃなくて~、ととり繕うつもりで

「じゃ、さっそくお供えしましょうか」と、夫婦で庭に出た。

確かに庭の西側の隅っこに、バレーボールよりもやや小さめの石があった。特に何か彫られているような特別なものではなく、普通の石だ。手前にマタタビを置いて、女性と一緒に手を合わせた。

「猫が守ってくれる家なんて、なんか素敵」と、妻は機嫌よく、女性と自分が昔、飼っていた猫の話で盛り上がっていた。

週明け、妻は眼科で検査したところ、網膜に穴が開いているのがみつかった。すぐに手術となり、レーザー治療を受けた。

猫の祟りじゃ無くて良かった。もしかして目の病気を警告してくれたのかもね、と、妻は猫の石に手を合わせた。

そこで私は見てしまった。西日に伸びる妻の影から、あきらかに猫の形をした影が離れて消えていくのを。

(文/木村圭司)

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