TOP>ニュース > 私に最初に死を教えてくれたのは猫だった。

  • ニュース

私に最初に死を教えてくれたのは猫だった。

虹の橋を渡る日まで

父が倒れて久しぶりに実家に帰ったら、通りを隔てた家の前がコンビニになっていて驚いた。店にはでっぷり太ったお嫁さんがレジにいた。細くてきゃしゃなお嫁さんが花嫁姿で家に来た日を思い出し、ここにも長い長い時が経ったのを感じた。

今はビルになってしまったわが家は、二階建てのクリーニング店を営んでいた。両親は仕事に忙しく、私は家に帰ると宿題をしながら二階から外を眺めるのが好きだった。当時お向かい酒屋さんで、店先でのんびり昼寝をしている姿をいつも見ていた。

故郷の空気を吸って、もう忘れていた子供の頃の風景が、鮮明によみがえって来た。

コンビニになる前の酒屋さんは古い木造の店舗で、おばあちゃんと息子さん夫婦がお店を切り盛りしていた。おばあさんは私に優しく、いつもお菓子をくれて、猫のシロと遊ばせてくれた。

シロは大きな雄猫で、誰にでも愛想がよく、近所でも有名な猫だった。父は「城山酒店じゃなくて白猫酒店だ」とよく言っていて、子ども心に父の冗談はいつもくだらないけど、その通りだなとも思っていた。

冬、寒くなると店のストーブの隣に座布団が敷かれて、猫は丸くなって寝ていた。春になると店先に縁台が出されて、その上でやっぱり猫が丸くなって寝ていた。

子猫が来た日のことは、忘れられない。二階から見下ろしていたら、酒屋の店先に小さく白い球のようなものがちょろちょろしている。走って店に行ったら、おばあちゃんが嬉しそうに「新しい子猫が来たよ」とお菓子を出してくれた。シロはねそべりながら、白い子猫がじゃれて遊ぶのを優しく見守っていた。シロはしっかり子猫を教育して、しばらくすると老衰で亡くなってしまった。

子猫はどんどん成長して、やっぱりシロと同じように、お客さんに愛想よく接していた。私は二階から酒屋を見下ろしながら、いなくなってしまったシロのことを、懸命に考えていた。

当時、流行していた歌の様に、シロも死んで風になって飛んでいるのかと思ったり、やっぱり死ねば無になるのかと悲しんだりした。私に最初に死を教えてくれたのは猫だった。

母によると「私がこの家に嫁いできた時、まだ酒屋のおばあちゃんは若くて、おじいちゃんも店で働いていた。その時も白っぽい猫を飼っていて、私もクリーニングが暇なときは良く遊んでもらった」というから、酒屋は猫を切らさず、どの子も立派に育つらしい。

実は、酒屋は猫を飼っているのではなく、猫が人を雇って働かせているのではないか、と妄想したこともある。白猫酒店の店主は猫神様で、従業員が白猫のお世話をするために働いている、と。

そんなことを思い出しながらコンビニの店先でぼーっと立っていたら、太ったお嫁さんが「やだ、まこちゃんじゃない!帰ってきたの?久しぶりね!おじさん、大丈夫?」と大声で話しかけてきた。すっかり商店街のおばちゃんになっていた。

よく見るとお嫁さんの首元には、白い猫模様のネッカチーフが巻かれている。挨拶もそこそこに、ついうっかり、「あ、シロちゃん?」と言ったら、お嫁さんは嬉しそうに、「会いたい?呼んで来る」と店の奥に引っ込んで、白い大きな猫を抱えて出てきた。

「まこちゃん、うちの子が大好きだったもんねえ」と大きな猫を抱かされてしまった。ずっしり重たい白猫で、酒屋からコンビニに代わっても、やっぱり猫がいた。白猫酒店の猫店主は代々受け継がれて、コンビニになった今も健在だった。

(文/柿川鮎子)

\ この記事をみんなにシェアしよう! /
この記事をみんなにシェアしよう!
関連記事
関連記事
  • ニュース

出産後の母猫が気を付けたい3つの病気とは? (11.28)

  • ニュース

猫用木製家具ブランド「KARIMOKU CAT」など、愛犬・愛猫と心地よく暮らせるペット用... (11.26)

  • ニュース

どの時間帯に掃除機をかければ、愛猫のストレスにならないのか? (11.25)

  • ニュース

【猫クイズ】無毛の猫スフィンクスに「必要なお世話」って? (11.23)

もっと見る

注目のグッズ

犬猫どっち派?村松誠の「2021年版 犬猫カレンダー」

ドラえもんに大変身!犬猫用『ドラえもん コスチューム』

人気記事
人気記事
\ PETomorrow をフォローするには下のボタンをクリック! /
PETomorrow をフォローするには下のボタンをクリック!


ページトップへ戻る