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本当にあの世があるのならば、すぐにあの子に会いたい

虹の橋を渡る日まで

「あの世って、本当にあるのかねぇ」

通りすがりにそう話しかけられて、少し驚いた。

話しかけてきたチホさんは、私がこの施設に来る前からいる、ベテランの入所者だ。

いつもこの時間は、今のように窓際に座って静かに外を眺めるのが日課で、たまたまそこに通りがかった私が話しかけられた。

「ねえ、あると思う?」

そう問いかけられて、死んでみないとわかりませんよ、と言いかけて、あわてて呑み込み

「えっと、どうしたんですか?」と辛うじて返すことができた。

「いえね、やっぱり行き先がわからないというのが、どうにも不安でねぇ」

また窓の外に目をやって、そう答えた。

「いやいやチホさんてば、それはまだ先の話だと思いますよ?」

「まだ先だなんて……

チホさんは苦笑を浮かべてさらに

「天国やら地獄とか、子供の頃から坊主の話は聞かされたけどね、その坊主だって、自分の目で見てきたワケじゃないからね、どうなのかしらね」

遠い目をしているチホさんに思わず聞いた

「チホさんは、あの世を信じてないのですか?」

チホさんはまたこちらに向いて

「ん~ん、信じたいとは思うの。だって、会いたい人もいるしね」

続けておどけたように

「会いたくない人もいるけど」

「チホさんが、会いたい人って?」

「両親ね。それとおじいちゃんかな」

「どちらも会えたら、怒られそうな気がするけど」

そして心なしか懐かしむような眼差しで

「あとね、人じゃないけど、シロに会いたいなぁ」

シロって?と聞き返す前にチホさんが続けた

「随分昔に飼っていた猫」

「キレイな白猫だったから、シロちゃん。すごく賢い子でね、あの子にだけは絶対会いたいわ」

チホさんが少し涙ぐんでいる。

「猫を飼ったのはその子だけでしたか?」

「そう、その子だけ。いつも側にいてくれたの、嬉しい時も辛いときも。ありきたりよね。でもね、婚家に連れて行けなくてね、最後を看取ることができなかった。そのことを謝りたいな、赦(ゆる)してくれなくてもいいから」

そう言って、また窓の外に目をやった。

それからしばらく押し黙っていたが、チホさんがハッとなって

「あら、ごめんなさいね、忙しいのに呼び止めちゃって」

「あ、いいんです、いいんです、またお話聞かせてくださいね」

そういえば、私はここに来て3年になるのだが、ちゃんとチホさんの話を聞いたのは初めてだったかもしれない。そうだ、普段物静かな人だったから、声をかけられて驚いたのだった。

気になることを尋ねてみた、

「チホさん、あの、ちなみに、会いたくない人って?」

「旦那よぉ!」

しかめっ面で即答。

思わず、あ、私もです、と返してしまって、二人で爆笑してしまった。

シロちゃん、チホさんが会いに行くのはもう少し先になりようだね。

(文/木村圭司、柿川鮎子)

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