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猫に教えてもらった緊急事態の過ごし方

虹の橋を渡る日まで

母親がガンだと診断されてから、あっという間に手術の日が決まった。母自身は「うちはガン家系だから、なると思ってた。あんたもちゃんと検査しときなさいよ」と、自分の身体についてはあまり深刻に捉えていない様で、見かけは元気にしている。

母の一番の心配事は猫だった。入院する直前まで「ちゃんとお世話してよ、トイレは毎回ちゃんと見るのよ、ちょっとでもトイレに変わったことがあったらすぐに病院に行ってよ」と猫のことばかりうるさく言っていた。

猫は母がスーパーの駐車場で拾ってきた子で、育ててくれた母にだけなついていて、私にはちょっと冷たい。同居人として認めてくれている様だが、べったり甘えてくることはない。よそよそしい感じもするけど、猫なんてそんなもんだ。

母は溺愛している猫がどんな具合か、四六時中、LINEとメッセで連絡してくる。でも、猫はあんなに可愛がってくれた母がいないのに、何事も無かったかのように、毎日、平然と過ごしているのだ。

母が可哀想なので、「おかあさんがいないって、猫が探してるよ。はやく元気になって帰ってきてね」なんて返信しているけれど、実際のところ、猫はいつもと全く変わらない。そして実は私はこの変わらない様子に救われているのだ。

母は「ステージなんて、おできみたいなもんよ」と言っていたけど、私にとってガンは父の命を奪った恐ろしい病でもある。両親ともガンで亡くしたらと思うと、怖くて仕方がない。

昼間、仕事をしている時は平気だけれど、夜、母が死んだらと思うと、胸が苦しくなってしまう。簡単な手術だとしても、万が一、ということもあるしと、つい悪い方へと想像してしまう。

でも猫は母がいなくなっても、必ず帰ってくると信じているのか、いつも通り何も変わらない生活を続けている。悠々と股間を舐めている姿を見ていると、こちらも根拠のない安心感をおぼえてしまう。「猫が動揺していないから、大丈夫かも」と思えるから不思議だ。

私は恐ろしい未来を自分で勝手に想像して怯え、一人で苦しがっているのに、猫はそんな無駄なことはしない。毎日自分のペースで暮らしている。まるで人(猫)生の達人のようだ。

猫を切らしたことが無い家で育った私だけれど、猫のすごさをこれほど感じたことはなかった。猫に学ぶことは本当に多い。私も猫と同じように、無駄に悩まず、苦しまず、悠々と毎日を過ごそう。

猫に教えてもらった緊急事態の過ごし方は、これからの私の人生にとって、けっこう大切な教えになるような気がする。

文/柿川鮎子
明治大学政経学部卒、新聞社を経てフリー。東京都動物愛護推進委員、東京都動物園ボランティア、愛玩動物飼養管理士1級。著書に『動物病院119番』(文春新書)、『犬の名医さん100人』(小学館ムック)、『極楽お不妊物語』(河出書房新社)ほか。

 

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