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「デッカイ犬」と暮らしてみたかったと言う友人

虹の橋を渡る日まで

「リモートが定着しそうだから、思い切って田舎に家を借りた。遊びに来いよ!」と、幼馴染の友人が誘ってきたので、引っ越し祝いの酒を車に積んで遊びに行った。

道に迷ったら、その辺の家で聞けばいいか、と安易に走っていたけど、民家が無い。地図アプリもいいかげんで、山道を表示してくれない。ようやく友人の家敷地に車を停めたら、手に汗がべっとりついていた。こんなに真剣に山道を走ったのは何年ぶりだろう。

「久しぶり!すげえ山ん中なんだな!走るの怖かったよ」と言ったら、「すげえだろー、夜になったら真っ暗で足元も見えなくなる」と、嬉しそうに自慢された。友人は真っ黒に日焼けしていて、良い笑顔をしている。

玄関を開けたら二頭の大型犬がどっと走ってきた。まさか家の中に犬がいるなんて知らなかったので、ちょっと驚いた。

「ダメ、ほら、シット!座れ、お座り!」犬は友人の指示に大人しく従うが、牛みたいにデカい。そんなのを前にして動けず固まってしまった。

「あれ?犬、ダメだったっけ?人は咬まないから大丈夫だよ」

「ダメじゃないけど、デカすぎない?

デッカイ犬と暮らしてみたかったんだ」

友人は嬉しそうに二頭を従えて、家の中を案内してくれた。古い農家らしく、板張りの床に囲炉裏(いろり)がしつらえてあり、家中に香ばしい灰や木の香りがする。家具も何もない広い室内で、天井が高く、絵に描いたような農家の一軒家だった。

「これだけ広いと、デッカイ犬がいても狭くないなあ」と、思わず唸(うな)った。「地図アプリにも載ってない田舎だから、心配したけど、これなら寂しくないな」

「毎日いろいろヤラなきゃいけないことがあって、寂しいとか感じる暇がないよ。今朝もこいつらが庭に入ってきた野生のキジを追っかけて大騒ぎになっちゃって、近所の爺さんに頼んで、獲ったキジをさばいてもらったんだ。後で鍋で食おう」

「すげえワイルドライフ!」

 もともと友人は線が細くて、うちの母親に言わせると「あんたと違う優しく繊細な男の子」だった。なのに、ちゃんと田舎付き合いをして、たくましく生きている。中・高と男子校で同級生だった頃は、俺の方が筋肉がついてたのに、今は完全に体も負けてる。

囲炉裏に上手に火を起こして、鍋を掛け、手際よくキジ鍋を作ってくれた。犬を飼った経緯や、今の仕事、付き合っている恋人のことなど、お互いに話しは尽きず、酒を飲みながら大学の下宿時代と同じように、いつのまにか寝てしまった。

早朝、起きたら布団が掛けられていて、誰もいない。友人を探して外へ出てみ。しばらく歩くと畑の向こうの小高くなった草むらで、友人が寝そべり、犬を撫でている。犬は時々、友人の顔を見て嬉しそうに尾を振っている。ちくしょう、何て幸せそうなんだ!

といっしょにいるだけなのに、ものすごく満ち足りている。あんなに自然で、気持ちよさそうな、あいつの顔を見るのは初めてだ。犬に嫉妬するなんて、どうかしているよ、オレ。友人と犬の、幸せな光景を見ながら、声を掛けられずに、佇(たたず)んでいた。

文/柿川鮎子
明治大学政経学部卒、新聞社を経てフリー。東京都動物愛護推進委員、東京都動物園ボランティア、愛玩動物飼養管理士1級。著書に『動物病院119番』(文春新書)、『犬の名医さん100人』(小学館ムック)、『極楽お不妊物語』(河出書房新社)ほか。

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