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動物におもしろいことをさせて、笑いをとる番組は不愉快だ。

虹の橋を渡る日まで

コロナで収入が減り、マンションの更新料が払えないと困っていたので、「うち来る?」と安請け合いしたのがまずかった。たった一か月だったけど、彼女との生活に消耗しきってしまって、別れを切り出した。泣かれてマンションのロビーで待ち伏せされたり、いろいろ面倒だったが、今はせいせいしている。

何より猫が元気になった。尿が出にくくなってしまい、一時は慢性腎臓病かとすごく心配したのだが、彼女がいなくなったとたんに、検査の数値がぐんと良くなった。

「これならもう、大丈夫、薬も要らないし、来なくていいよ」と動物病院で完治宣言されて嬉しくて、つい友人の獣医と余計なおしゃべりをしてしまった。獣医は友達の弟で、大学の後輩でもある。うちの子はこの病院の前に段ボールに入って捨てられていたのだ。

「こんなに急に良くなって、何かあったの?」

「同棲していた彼女がうちから出て行ったんだ」

「へー、やっぱり環境が変わると違うね」

「彼女がストレスだったって、わかってたんだけど、可哀想なことしちゃった」

彼女は猫を自分のおもちゃ代わりに可愛がっていた。うちの子は人懐っこいし、かまってもらえるのが大好きだから、彼女が相手をしてくれるのを嫌がったことはない。彼女が呼べば必ず近寄っていくし、撫でられていたら何時間でもじっとしていた。

でも、ずっと猫と暮らしていた自分から見ると、猫は無理をしていた。彼女が猫を抱いて両手を上げ下げしながら「猫じゃ猫じゃ」なんてふざけて、おもちゃのように扱っているのを見るのは、とても嫌だった。

そういう猫の扱い方は大嫌いだと、テレビの動物番組を見ながら自分の気持ちを伝えたことがある。動物におもしろいことをさせて、笑いをとる番組は不愉快だ。笑いや楽しみのネタにするのは、犬や猫の尊厳を冒涜している、と。

猫はペットだけれど、同じ命をもつ生き物だと、どんなに伝えても彼女は「え?でも猫でしょう?」とか「嫌がってないし、可愛がってるよ?」と理解してくれなかった。自分は飼い主だから、猫には何をしても良いのだ、という傲慢さが伝わってきて、ついに大喧嘩の末、別れてしまったのだ。

「猫に対する感覚が自分と全然違ってて、ダメだった」

「あーそういうのすごくわかる。人が上で猫が下じゃねえよなー。飼い主にそうは言えないけどさ」

「やっぱそうだろ!猫にかまうのはさ、猫がそうして欲しいって時だけにして欲しかったんだよ。こいつ、いい子だから、嫌だって言えなくて、ストレスたまってオシッコ我慢しちゃった」

「でも、すぐに気が付いて、えらいよ。やっぱたっちゃんに飼ってもらってよかった。兄ちゃんが達也に頼めって言ったの正解」とほめてくれて、ちょっとだけ診察料を安くしてくれた。

彼女と別れてモヤモヤしていたけれど、猫のために良かったと友人の獣医に太鼓判を押してもらって安心した。仲間内では「同棲した彼女をいきなり追いだした令血非道な男」と噂されているらしいが、もういいや。猫の両手を上げ下げして「猫じゃ猫じゃ」なんてやられたくねえんだ、と、静かに寝ている猫を見ながら、ひとりで美味い酒を飲んでいる。

文/柿川鮎子
明治大学政経学部卒、新聞社を経てフリー。東京都動物愛護推進委員、東京都動物園ボランティア、愛玩動物飼養管理士1級。著書に『動物病院119番』(文春新書)、『犬の名医さん100人』(小学館ムック)、『極楽お不妊物語』(河出書房新社)ほか。

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