2020-07-06 アメリカンショートヘアの高精度な全ゲノム解読に成功 ゲノム猫 アメリカンショートヘアの高精度な全ゲノム解読に成功 ネコは国内でおよそ950万頭が飼育されている最も人気の高い伴侶動物だ。 近年、ゲノム情報を活用し、それぞれのネコに最適な治療を提供するゲノム獣医療が注目を集めている。 これは人間の医療分野で発展してきたゲノム医療をベースにした考え方で、個人のゲノム情報からその体質を予測することで、個人に最適な医療を提供するというもの。 このゲノム医療をネコの獣医療に応用するためには、ゲノム情報の蓄積が必要不可欠。しかし、人間とは異なり、ネコの場合は利用できるゲノム配列情報がアビシニアン種の1品種のみと限られていた。このアビシニアン種は近親交配が進んでいる品種であり、ゲノム中に存在する遺伝子変異も少ないため、他の品種と比較する際に、調べることができる遺伝子変異が少ないという問題があった。 また、染色体レベルでの配列構造も未解明の部分が数多くあり、こうした未解明の変異や配列構造が、ゲノム獣医療を進めるための研究を妨げている理由の一つ。そのため、より正確なゲノム配列の情報を明らかにすることが望まれていた。 そこでアニコム先進医療研究所は、情報・システム研究機構国立遺伝学研究所、公益財団法人・かずさDNA研究所および香港中文大学(香港)との共同研究により国内外でも人気が高く、遺伝的に多様性が高い猫種であるアメリカンショートヘア種を対象として、正確なゲノム配列の解読と、染色体レベルの配列構造の解明を目的として研究を行った。 また、当該ゲノム配列情報と、付随する遺伝子の機能情報を広く公開し、関連する研究をサポートするためのデータベースの構築も行った。 研究成果の概要と意義 ①超並列シークエンシング技術と大型計算機を駆使し、アメリカンショートヘア種のほぼ全長のゲノムを19本の染色体レベル(うち18本は常染色体、1本は性染色体(X))で高精度に解読した。解読されたゲノムの全長は2,493,141,643 bp (塩基対)。 ②アメリカンショートヘア種は次の三つの特徴を持つため、研究で対象猫種に選んた。最初の理由は、国内外でも人気が高い猫種の一つということだ。アニコム家庭どうぶつ白書2019によれば、国内の人気猫種ランキング第2位に位置している。 二つ目に、スコテッシュフォールド種やボンベイ種などの他の猫種の交配にも使用されるなど、遺伝的に近縁な猫種が多いという特徴もある。 世界的にも人気が高く、他の近縁な猫種も含めた多くの個体が存在することは、今回の遺伝子変異の情報をより多くのネコ種に適用でき、ゲノム獣医療に関する研究を大きく発展させる可能性を秘めている。 三つ目の理由として、アメリカンショートヘア種が、アメリカ大陸に初めて上陸したネコを祖先としており、イエネコにおける品種の成り立ちを考える上でも極めて重要な猫種である点だ。これらの理由から、研究ではアメリカンショートヘア種を対象として研究を行った。 ③解読した全ゲノム上には23,119個の遺伝子があることが分かった。 ④アメリカンショートヘア種とアビシニアン種との配列を比較したところ、両者は染色体の一部で異なるゲノム構造をもっていることがわかった。2つのゲノム構造の違いをさらに詳しく調べることで、アメリカンショートヘア種で見られる肥大型心筋症などの好発する遺伝病と関連した遺伝子や、品種の成り立ちに関する新たな知見を得られることが期待される。 アメリカンショートヘア種とアビシニアン種のゲノム構造の違い。各グラフの番号は19本の染色体番号を示している。赤丸はゲノム構造が特に異なっていると考えられる領域で、横軸は染色体の位置、縦軸は遺伝的な違いを示している。 ⑤本研究により得られた情報は、データベースCats-I (https://cat.annotation.jp/) およびバイオ系のプレプリントサーバーbioRχiv(バイオアーカイブ)で公開している。 将来の波及効果 ①アメリカンショートヘア種の全ゲノム解読に世界で初めて成功したことで、人気の高いこの種に特徴的な病気や体質に関わる遺伝子の研究だけでなく、イエネコ全体のゲノム獣医療の発展に向けた応用研究が飛躍的に進む。 ②データベースの構築により、遺伝情報に基づいたゲノム獣医療を進めるための正確な遺伝情報の蓄積とその情報共有が可能になる。 従来型の獣医療では、どの個体にも同じ治療を行っており、治療法によって効果がでないネコも存在していた。ゲノム獣医療では、ゲノム情報に基づいて個体の体質に適した治療を行うことで、より効果的、効率的に獣医療を進めることが可能になる。 本研究はアニコム先進医療研究所株式会社、情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所、公益財団法人・かずさDNA研究所および香港中文大学(香港)の共同研究により実施された。 論文タイトル:AnAms1.0: A high-quality chromosome-scale assembly of a domestic cat Felis catus of American Shorthair breed 著者:Sachiko Isobe, Yuki Matsumoto, Claire Chung, Mika Sakamoto, Ting-Fung Chan, Hideki Hirakawa, Genki Ishihara, Hon-Ming Lam, Shinobu Nakayama, Shigemi Sasamoto, Yasuhiro Tanizawa, Akiko Watanabe, Kei Watanabe, Masaru Yagura, Yasukazu Nakamura 掲載誌:BioRχiv DOI: 10.1101/2020.05.19.103788 構成/編集部 \ この記事をみんなにシェアしよう! / この記事をみんなにシェアしよう! 【猫クイズ】短足・小型・巻き毛が特徴の「ラムキン」ってどんな猫種? (3.3) ぼくたちは猫を育てているのではない。猫に育てられているのだ。 (2.27) 雪の降る中、お姫様抱っこで登校しました。 (2.27) タヌキは人を化かす!?ただしどうやら猫には勝てない (2.27) 注目のグッズ 犬猫どっち派?村松誠の「2021年版 犬猫カレンダー」 ドラえもんに大変身!犬猫用『ドラえもん コスチューム』 ボディケア用品からお菓子まで!猫好きな彼女や妻に喜ばれるホワイトデーギフト4選 【猫クイズ】短足・小型・巻き毛が特徴の「ラムキン」ってどんな猫種? 愛犬がまさかの“犬嫌い”…その原因はどこにあるのか? ぼくたちは猫を育てているのではない。猫に育てられているのだ。 \ PETomorrow をフォローするには下のボタンをクリック! / PETomorrow をフォローするには下のボタンをクリック! Facebook にいいね!する Twitter をフォローする Instagram をフォローする Pinterest をフォローする