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“下僕たち”にぜひとも手に取ってもらいたい「わたしのげぼく」

わたしのげぼく

筆者は、猫の下僕だ。愛猫のことを「おキャット様」と敬いながら日々、ご飯やおもちゃ、おやつを献上させていただいてる。おキャット様に貢ぎ、振り回される日々は楽しく、触れ合い続けるうちにどんどん、猫という動物の魅力にハマっていく自分がいることに驚愕する。猫には不思議な魅力があると思う。決して媚びないのに人間を虜にし、自分の下僕に変えてしまうからだ。

そんな世の“下僕たち”にぜひとも手に取ってもらいたい、大人の絵本がある。それが『わたしのげぼく』(上野そら:著/くまくら珠美:絵/アルファポリス)だ。この1冊には猫の優しさが、ぎっしりと詰め込まれている。

本作の主人公は、ネコの「わたし」。「わたし」はかっこよくて賢く、素早いのが自慢のオス猫。「わたし」は、鈍くさい4歳の男の子「げぼく」と一緒に暮らしている。「わたし」視点で描かれている物語は、ちょっぴり上から目線でコミカルに進んでいく。

「わたし」の目に映る2人の日常は、とても微笑ましい。例えば、「げぼく」が大切にしているロボットを自慢の肉球を使って落としてしまった時、「わたし」は悲しむ「げぼく」にゴキブリをプレゼントし、絆の修復を試みる。こんな風に猫の習性が盛り込んであるところや、猫の優しさと人間が望むことが歯がゆく食い違う“猫飼いあるある”な描写に読者は笑い、温かい気持ちにさせられてしまう。

しかし、どんな幸せな時間にも必ず終わりがやってくる。時が経ち、「げぼく」が大きくなるにつれ、「わたし」は老いる。18歳になった「わたし」は自分の体と向き合い、じきに死がやってくることを悟った。その時「わたし」が語る「げぼく」への想いを目にすると、読者の涙は止まらなくなる。これは愛猫の目に映る「我が家」なのかもしれない…と思わされ、思わず「わたし」に愛猫、「げぼく」に自分の姿を重ね合わせてしまうのだ。

猫は犬と比較され、「人に慣れない動物」だと、よく言われるものだ。けれど、本当にそうなのだろうか。実際に猫と暮らしていると、その言い伝えは嘘ではないかと思わされることが多々ある。

例えば、帰宅時に一目散にスリよってきてくれた時や頬を流れる涙を舐めてくれた時。猫は飼い主を信じ、人間に愛情を注いでくれている。そうした姿を見ていると、時々思う。もし私が自分よりも体の大きな異種生物と暮らしていたとしたら、こんな風に身を預けられるだろうか…と。そう考えると、猫が私たち下僕をどれだけ信頼し、想ってくれているのかを実感させられ、胸が熱くなる。

猫は決して媚びず、自由気ままな暮らしを好む。だが、私たちが思っている以上に飼い主のことを思い、慕っているのだろう。本作を手に取ると、そんな思いに駆られ、いつもより強くおキャット様を抱きしめたくなる。

文/古川諭香

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