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「結構毛だらけ猫灰だらけ」って何だ?

「結構毛だらけ猫灰だらけ」って何だ?

猫好きだと、猫のつく言葉を聞くと嬉しくなります。猫の手も借りたいとか、猫の目の様に気まぐれよ、なんて言われただけで、愛猫を思い出してニコニコしてしまうのです。

猫の慣用句で「結構毛だらけ猫灰だらけ」という言葉を聞いたことがありますか? 私は子どもの頃、「確かに猫を飼っていると結構毛だらけになる」と間違って理解していました。

大辞林によると、正しい意味は「大変結構だという意味の地口」です。地口とは、ことわざ・成句と似た発音の文句を作って言うしゃれ言葉のことです。誰かがおもしろい言い回しとして使ったのが広まって、今に伝えられています。

意味は理解しても、猫好きにとっては、「猫灰だらけ」が気になります。どうやら昔の人々の間では、冬に猫が灰だらけになるのは、普通の光景だったようなのです。

猫は寒いところが苦手ですが、日本の住宅は暑い季節を快適に過ごすように作られていました。したがって、冬の室内は寒くて、猫にとっては厳しい環境でした。火鉢や炬燵があればよいのですが、就寝時には消されてしまいます。寒い家の中で暖かかったのは、台所で火を焚く竃(かまど、へっつい)の中だったのです。

竃は関東ではかまど、関西ではへっついと呼ばれます。台所で調理するために火を起こすための道具で、薪や炭を燃やした灰がたまっていました。火が消えても温かく保たれ、猫はそこで暖を取ることが多かったのです。

俳句でも冬の季語で竃猫、灰猫という言葉がある通り、冬の間、猫が灰の中で暖かくして過ごすのはよく見られた光景だったようです。

灰や炭には抗菌作用があり、皮膚の害虫を駆除するためにも役立っていたという説がありますが、医学的な根拠はありません。

渥美清演じる寅さんは香具師(やし)の口上が得意でした。第40作の「寅次郎サラダ記念日」ではこんなセリフがあります。

「〈それにつけても金のほしさよ〉。これで七七。ゴロがいいからね、七七調ってのは、いくらでもつきますよ。結構毛だらけ猫灰だらけ、お尻の回りは糞だらけ。こりゃちょっと汚いか」

冬に灰まみれになった猫は、暖かい春になって、きれいに洗ってもらいました。春の季語には猫洗う、という表現があります。

寒い季節、暖かい暖房の部屋でのんびりくつろぐ猫を見ていると、竃の中で灰まみれになっていた猫がいた時代が、とてつもなく遠い昔のような気がします。

文/柿川鮎子

「犬の名医さん100人データーブック」(小学館刊)、「犬にまたたび猫に骨」(講談社刊)、「動物病院119番」(文藝春秋社刊)など。作家、東京都動物愛護推進委員)

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