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猫を介した心の交流が泣ける『モノレールねこ』

猫を介した心の交流が泣ける『モノレールねこ』

読書の秋には、じんわりと心が温まる小説も恋しくなるもの。愛猫家からしてみれば、大好きな猫が物語に出てきてくれたら、より一層読書を楽しめそうな気がしますよね。そんな時に、ぜひ手に取ってみてほしいのが、加納明子さんが手がけた『モノレールねこ』(文藝春秋)。

本作は日常にさりげなく現われる、大切な人との絆を描いた短編集。全8つの温かいストーリーは、疲れた心に染み入ります。各作品はどれも異なる魅力を持っていますが、その中でも猫好きさんにぜひチェックしてほしいのが、表題名にもなっているショートストーリー『モノレールねこ』です。

主人公は、小学5年生のサトル。ある日、サトルはデブで不細工な野良猫と遭遇。白地に黒のぶち模様を持つその野良猫は塀に乗ると余分なお肉が垂れて、まるでモノレールのように見えました。そこで、サトルは野良猫のことを「モノレールねこ」と呼ぶようになったのです。

一方、そんな「モノレールねこ」が捕獲されないよう、赤い首輪をつけてあげたのが「タカキ」。サトルは首輪を見て、野良猫だと思っていた「モノレールねこ」が飼い猫であったのかと驚愕。首輪に短い手紙を挟んで、タカキと文通をするようになりました。

ところが、ある日「モノレールねこ」は、車に轢かれて死亡。それを機にタカキとの交流は途絶えてしまいますが、2人の関係は思わぬ方向へ。ラストには、読者をあっと言わせる衝撃的な展開が待ち受けています。

本作は「モノレールねこ」の描写が細かく、姿かたちが想像しやすいのが魅力。加納さんが作品の中に生み出した「モノレールねこ」は、こんな猫が実際にいそうだなと思えるほど、リアル。デブで不細工で生意気だからこそ「モノレールねこ」はかわいいなと思えてしまいます。

作中には猫好きではないサトルのお母さんも登場するため、前半には猫好きさんが思わず目を背けたくなってしまうような厳しい描写も…。しかし、サトルとタカキの交流を見ていると、読後には温かい気持ちになれます。

なお、本作には他にもユニークな作品が盛りだくさん!心理学を面白く解説した「パズルの中の犬」や、ザリガニが家族を見守ろうと奮闘する「バルタン最期の日」など、個性的で温かみのあるショートストーリーも併せてチェックしてみてください。特に、「バルタン最期の日」は、多くの読者を号泣させている名作。「ザリガニに泣かされる日がくるなんて…」と思いつつも、ザリガニであるバルタンの姿を通して、自分の人生の意味や価値を振り返りたくなるはずです。

「家族の絆」をテーマに繰り広げられる全8つの物語の中には決してハッピーエンドとは言えないものもあります。しかし、そうした作品にも優しさと温かさが込められていて、心がほっこりさせられるはず。ぜひ本作を手に取り、命の脆さや尊さに想いを馳せてみてください。

文=古川諭香

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