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妖怪すねこすり、その恐るべき所業【異形の猫】

日本では古来より、数々の恐ろしい妖怪たちの記録が存在している。
彼らの多くは人間の恐怖心と、想像力が生んだ空想の賜物だ。
しかし、妖怪の全てが果たして、本当に空想上の存在と言い切れるのか。

中には本当にかつて目撃された化け物もいるのではないだろうか。

今回は、ある妖怪に着目して話をしていきたい。
妖怪の名は、すねこすり。

名前を書いただけで今現在、筆者の心臓はバクバクだ。
恐ろしくてかなわない。
果たしてあなたはこの妖怪の詳細なコラムを最後まで読んで、生きていられるか……。

恐怖!すねこすり

妖怪にはさまざまな習性がある。

あずき洗いという妖怪は、真夜中に川で小豆を洗うからあずき洗いと呼ばれる。古くなった白いぼろ雑巾が転生して生まれた龍のような妖怪は、白うねりと呼ばれる。

民家に忍び込んでは天井を舐める妖怪を、天井嘗(てんじょうなめ)と呼ぶ。

妖怪の中にはこうして、名前と習性を関連付けられたものは数多い。

すねこすりもまた、そういう類の妖怪だ。

彼は雨の降りしきる真夜中、山道を歩いている人の元に突然忍び寄る。

そしてその名の通り、そっと、人の脛に体をこすり付けるのである。

するとどうなるか。歩きにくくなってしまうのだ!

これをもしも繰り返されれば、もう永遠に家に戻れない……地獄のはじまりではないか。

その姿はまるで犬や猫にように描写されている。
特に筆者は子供の頃、水木しげるの妖怪図鑑ですねこすりの頁のイラストを見た途端に「あ、ねこちゃん!」と声を上げてしまった。

耳折れの猫とクリソツなのだ。
そう、まさにスコティッシュフォールドのように……。

恐怖の妖怪、すねこすりはここにいた!

夜道を心細く1人で歩く人間に対して、前触れなく胴体をこすり付ける妖怪、すねこすり。
何とも恐ろしいことこの上ない。

そんな恐怖の大妖怪すねこすりは、どこに出没していたのだろうか。
これについての記録はちゃんと残っていて、岡山県小田郡の辺りであったと考えられている。
この地域の山道に、すねこすりはしばしば現れたというわけだ。

また、人里のすぐそばに出没したという話もあり、このときも何人かの人間の足に体をこすりつけ、歩きにくくしてしまったというから始末に負えない。
そしてこの恐るべき妖怪は、まだ現代にも生き延びている可能性がある。

何故なら平成の時代に入っても、しばしば遭遇例が報告されてるからだ。
目撃者によれば、その姿は猫に似ているという。

そして猫と言えば、人慣れした個体なら人の足元にすり寄ってきて、胴体で脛をこする……。
あれ? じゃあすねこすりの正体ってやっぱり猫?

おわりに

実はすねこすりという妖怪の正体には、犬説と猫説がある。
元々は犬に酷似した妖怪とされていたが、水木しげるが描いたすねこすりが猫のような顔をしていたので、以降は「すねこすりは猫」という定説が固まりつつある。

最近の目撃情報のすねこすりが猫に似ているのも、その影響を受けているに違いない。

ちなみに我が家には猫に化けたすねこすりが3頭いる。

文/松本ミゾレ

イラスト/今井美保

東京生まれ。少女マンガ誌でデビュー後いくつかの連載を経て、妖怪マガジン「怪」(角川書店)の「第一回怪大賞・京極夏彦賞」を受賞、妖怪漫画の道へ。イラストや漫画をほそぼそと描きながら暮らしている。

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