天下無敵の母親失格。海苔子という女・別離
この物語は、ここ30年でノラ出身のネコを12匹保護し、一緒に生活し、ついに全員を看取った中年男の喜怒哀楽に満ちた日常の回顧録である。
第四十一回 海苔子という女・別離
自分の子供用に用意された缶詰の離乳食を、子ネコたちを蹴散らして自分一人で貪り喰うように完食した女“海苔子”。
もはや“母ネコの素質ゼロ!!”の烙印を押された海苔子だったが、本人はそんなことは全く意に介せず、相変わらず自由気ままに暮らしていた。
それでも時々、子供たちをナメてあげたりはしていたようだったが、子ネコたちも、家の中を自由に好き勝手歩くようになったし、よくいえば放任主義といった状態で、子ネコたちは親離れしていいような状況になってきた。
この頃、家にいるネコは、生まれた子ネコを除いて5匹いた。
その後、なんだかかんだでピーク時には10匹程のネコが同時に家にいる状況になってしまうのだが、この頃はまだネコと暮らし始めてから日も浅く、
「5匹以上はちょっと飼えないよなァ〜」と思っていた。
海苔子の子供たちの里親を見つけないとなァ〜と思っていた。
ただ、最初はこうも思っていた。
「子供と離ればなれになるのは、母親である海苔子も辛いだろうなァ」と。
しかし、海苔子の子育てをみているうちに、そんな気持ちは完全にこう変わっていった。
「絶対に海苔子は悲しまない!」
そんなことよりも、オレと女房の方が、よっぽど生まれた子ネコたちとは別れることが哀しかった。
でも里親を見つけようと思った。
その理由は明快である。
「だって、海苔子といると教育上よくないでしょ!」
海苔子の子供たちの引き取り手はスムーズに決まった。
女房の友達が、かなりの金持ちで広い家に住んでいるんだけど、ここの家が何匹が引き取りたいと。
ウチから家も近いのでしょっちゅう会いにも行けるし、過去にも犬やネコと暮らしている、動物の世話に関してはオレら夫婦よりもよっぼどのベテランなので、そっち方面の安心感もあった。
そしてもう一軒、女房の両親も、今となっては夫婦の二人暮らしなので、
「是非ネコをもらいたい」といってきた。
電車に乗れば1時間と離れていない距離にすんでいるので、こっちもいつでも会いに行ける。
里親問題はアッサリとクリアした。
何度も書いたけれど海苔子が美人なので、子供たちもみんな顔だちがキレイだったというのも、里親がアッサリ決まった理由だったかもしれない。
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