脱走ネコ・プーピー「ネコ界のせごどん」
それも、ただそこに寝ていたというだけじゃない。オレの枕元にたたずみ、ジーッとオレの眼を見つめていたのである。
そのプーピーの瞳はオレに、こう語りかけていたかのようだった。
「まぁ気にしなさんなって」
ものすごい優しい眼であった。
「人間さ、長い人生、1回や2回、そんな失敗ありますよ」
そういってるかのようだった。
「だいたいアレでしょ? 誰かに危害を加えたとか、そういうことじゃないんでしょ?」
まぁそういわれてみればそうだねェ。
「ケガしたのは自分だけでしょ?」
まぁそうだけど。
「そんならいいじゃない! さ、もう起きて顔でも洗いなさいよ、二日酔いだろうから」
まぁ自分の都合のいいように解釈してるかもしれないけれど、本当にこの時のプーピーは、オレからズーッと視線を離さず、ただ語りかけるようにオレを見つめていたんですよね。
たしかに時々プーピーはオレの枕元で寝てたけど、そんな風にジーッとオレを見つめたことなんてなかったんですよね。
それがこの日に限って、オレも見つめてる。もう絶対に全部わかってるんだなぁ〜って思った。
そしてオレを励まそうとしてるんだなぁ〜って、勝手かもしれないけど思った。
その暖かい視線にオレは勇気づけられた。「よし起きる!」なんてプーピーに言って、一緒にベッドから出たもん。
その時、プーピーはオレにニコッと笑いかけながらベッドから降りたような気もしたんだよなァ〜。
それ以来、なにかプーピーには頭が上がらないというか、オレにとって「アニキ!」みたいな感じのネコになっていた。
↑アニキだけあって、裕次郎チックなサングラスもよく似合うのであった。
プーピー最大の思い出は、脱走よりも、実はこの朝の出来事である。
ありがとうねプーピー!
(次号、新章へ)
文/カーツさとう
カーツさとう
コラムニスト。グルメ、旅、エアライン、サブカル、サウナ、ネコ、釣りなど幅広いジャンルに精通しており、新聞、雑誌、ラジオなどで活躍中。独特の文体でファンも多い。
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