第十三回 腸弱の貴公子タックン そき 謎のあだ名【カーツさとうの保護猫!日々猫!介護猫!】
この物語は、ここ30年でノラ出身のネコを12匹保護し、一緒に生活を続け、そのうちの11匹をすでに高齢で看取った今、残りの一匹“ビッタ(18才・オス)”と暮らす中年男の喜怒哀楽に満ちた日常の記録である。
第十三回 腸弱の貴公子タックン そき 謎のあだ名
女房曰く“我が家のネコ史上最強の美男子”であるタックン。そのタックンが、まだウチと外を行き来している半野良状態の時に、ウチのマンションの他のお宅がタックンに付けた名前が“センちゃん”だった。
「セ、センちゃん!?」
その話を女房から聞いた時、オレは思わずそう叫んだ。いや、別にどんな名前を付けてもいいけど、センちゃんって!? いったい何故にセンちゃん?
「それがね…」
女房の説明はこうだ。
センちゃんと名付けたお宅はウチのマンションの一階にお住まいなんだけど、その一階の庭に洗濯機を置いていた。もうこの“洗濯機”という単語が出た時点で、読者のある程度は色々な推測をしているだろう。
「洗濯機の上で寝るのが好きだったとか?」
いやいや、聞いた事実はそんなのを遥かに凌駕するエピソードだった。たしかにタックンは洗濯機が好きだったらしい。
「あ〜洗濯機の中に入るのが好きだったとか?」
そう思う人もいるだろう。しかし、そんな生半可な話じゃない。
ある日、洗濯機がスイッチも入れてないのにガタゴトと揺れ動いているのを一階の人が発見した。おかしいと思って洗濯機のフタを開ける……しかしパッと見ただけでは中はカラッポ。それでも揺れ続ける洗濯機。
なんで揺れるの洗濯機!? もしやオカルト現象か?そう思い、中をよく観察してみると!!
なんと洗濯機の洗濯槽っていうんですかね、ほらグルグル回る円筒状の部分が中にあるでしょ?
脱水する時用に小さな穴が一杯空いてるヤツ。
あの洗濯槽に空いた穴の向こうで、なにやら茶色いモノが蠢いている。耳を澄ませば「ニャ〜」みたいな声まで聞こえる!!
なんとタックン、洗濯機の洗濯槽と外枠の間の狭ァ〜い隙間に入り込んで、出るに出られなくなってもがいていたらしいのだ!
これには一階の人も驚いた! どうにか出してやろうと、洗濯槽をちょっと斜めにしてみたり、したけれど、狭い所を通り抜ける技には長けてるハズのネコですら通り抜ける隙間ができないッ!!
もうどう頑張ってもタックンは出ることすらできない!
いやもうこの時点でいったいどうやって入り込んだのかがミステリーなんだけと、そんなことはもうしょうがない。なにかの弾みで入り込んでしまったんだろう。
問題はどうやって出すか? だ!!
当然のように電気屋さんを呼んで、なんと洗濯機を分解してもらい、やっとのことでタックンは洗濯機から脱出することができたというのだ。
もちろん電気屋さんに修理代というか分解代というかネコ救出代を支払っての話ですよ。
それ以来、一階のお宅でのタックンの呼び名は“洗濯機”の“センちゃん”ということになったと
いう。まぁ、そりゃあそうなっても仕方ないわなァ…。
↑「まことに面目ございません…」そういいつつ布団にくるまるセンちゃんことタックン。
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