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ウルトラ問題児ビッタ“名人芸と声”

この物語は、ここ30年でノラ出身のネコを12匹保護し、一緒に生活し、ついに全員を看取った中年男の喜怒哀楽に満ちた日常の回顧録である。

ウルトラ問題児ビッタ“名人芸と声”

とにかくビッタはありとあらゆる所にマーキングのオシッコをしまくった。

オシッコ防御用のペットシートはいたる所に貼ってはいた。

しかしビッタのオシッコというヤツは、偶然なのかワザとなのか、なぜかペットシートとペットシートの隙間を狙うかのようにマーキングされていた。いや、もちろんペットシートとペットシートは3センチくらい重ねる部分を作って張り付けましたよ。

でもその重ねた場所でも、うまいこと斜めから重ねた部分の間を縫うようにオシッコするんですよ、ビッタのヤツ。

そして、ペットシートの裏にある壁に、少量ではあるがオシッコを到達させる。

まさに名人芸!

しかし、名人になればなるほど手のかかる名人芸であった。オシッコをされるその度毎にペットシートを剥がし、壁……っていっても白いビニールの壁紙が貼ってあるので、それをハイターで消毒するようにして拭き、また改めてペットシートを張る。

毎日何度も何度もその作業に明け暮れた女房は口癖のようにつぶやいた。

「恨みでもあるのか…」 いや、ないと思う。
「オマエは誰のおかげでオマンマ食えてると思うんだ?」

そんなこといっても当のビッタはまったくもって理解してないと思うが、とりあえずそう口に出していうと、なにかストレスが解消される気がして、ビッタにいってみる。

当のビッタは理解する以前に、聴いてもおらずオシッコをした気持ちよさなのか、のうのうと寝ていたりした。

ただただビッタのオシッコだけは毎日続いた。

↑チクゾウとミケ子の二人の間にいるビッタ。最初っから三人でいたわけではなく、二人の間にふてぶてしくも割り込んで、こんな状態を形作っている。
「もうあきらめた!」

さすがに1年もこんな状況が続くと、これはビッタのクセというか習性なのだろうとあきらめた。

そういうネコとして付き合っていかなきゃしょうがないと思った。

オシッコを壁にするといってもいってもあくまでマーキングで、本当の排尿としてのオシッコはちゃんとネコ用トイレにしていたので、その量はたいしたことはない。毎日2回のトイレ掃除と同じように、毎日暇があったら壁を見回り、マーキングした場所を見つけたらペットシートを張り替え、その裏の壁まで到達していたら消毒をするという作業は、我が家の日常のルーチンワークになっていた。

そんな今でウチにいたネコとはまったく違う習性を見せるビッタであるが、実はもう一つ、他のネコと徹底的に違うことがあった。

なんと、まったく鳴かないのである。

ウチにきてから一度たりとも「ニャー」とか「フニャー」ともなんとも鳴かない。

なにか発声したりする器官に障害があるかもしれないなァ〜と思っていた。

そんなある日。

ビッタがまだ子供の時から一番仲良くしていたのは黒ネコの平助だった。平助は若い時から歯が弱く、10才の頃にはすでにすべての歯が抜け落ちていた。

その平助と仲良くしていたからだろう。平助に子供の時から嘗めまくられていたからだろう。推測だけど平助のミュータンス菌がビッタに移ったのか、ビッタも若いときから歯が少しずつ抜けていた。


↑グラグラの抜けそうな歯が口から飛び出て、セイウチ状態になってるビッタ。これまたふてぶてしい…。

ある日、一本の歯がグラグラになっているのが見えた。すでに根っこは歯茎から取れ、歯肉にちょっと歯がくっついているような状態になっていた。

ビッタもなにか居心地を悪そうにしていたので、これは思い切って抜いてやろうと、そのグラグラの歯を手でつまんで引っこ抜いてあげた。

すると、歯は完全に抜けたのだが、なぜか抜けた歯が他の歯と歯の間に挟まってしまい、にっちもさっちもいかない状態になってしまった!

無理してその歯をを取ってあげようとしたのだが、ビッタも嫌がって口を触らせない。これはもう動物病院につれて行って取ってもらうしかないな……とビッタをペットキャリーに入れた、その時である。

今まで一回たりとも「ニャー」とすら鳴いたことのないビッタがいきなり、

「ムギャアアアアアアア!!」と大声で鳴いたのである。

ウチにやってきて、すぐの健康診断、そしてその半年後くらいの去勢手術で2回ほど動物病院に行ったことはあったけれど、それはまだ子ネコに毛が映えたくらいの頃。

成猫になってからは初めての動物病院……つまりは成猫になってから初めてのペットキャリーでの外出だったので、大人のネコとして初めて恐怖を感じたのかもしれない。

その恐怖が、初めてビッタから声を出すことになったのだろうが、まさか声が出るとは思わなかった。今までなんで声を出さなかったんだろう? という疑問はおいておいて、正直、ちょっとうれしかった。

病院での歯を取る処置は半ば予測してはいた通りほんの一瞬で終わったけれど、その往復の道すがら、ビッタは常に鳴き続けていた。

そして、その日以降、今まで一回も鳴いたことのないビッタは、他のネコ同様、普通に鳴くネコになった。

一体今までの鳴かなかったのはなんだったんだろう?

いまだに謎である。

文/カーツさとう

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カーツさとう
コラムニスト。グルメ、旅、エアライン、サブカル、サウナ、ネコ、釣りなど幅広いジャンルに精通しており、新聞、雑誌、ラジオなどで活躍中。独特の文体でファンも多い。

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