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子犬に影響を与える母犬の行動、盲導犬の場合は特殊?

「三つ子の魂百まで」という諺があるが、人や動物でも、幼少期の環境や経験が、その後の成長にどんな影響を与えるか?をテーマにした研究は行われている。

たとえば、ビーグルの8組の親子を観察した研究では、母犬による子犬のケア(体を舐める、排泄を促すために生殖器を舐める、子犬に接触するなど)の密度が高く、その期間が長いほど、子犬の探査行動、およびキャンキャンいう鳴き声を初めて発するタイミングに関連し、ストレス反応行動を減少させるとしている。

反対に、その密度が低く、期間も短いほど体の動きが増し、悲痛な鳴き声や破壊行動と関連すると。

この研究にあたっては、生後3週間の観察をした後、生後58日~60日で子犬の行動テストを行っているのだが、こうした母犬のケア行動が、生後8週齢の子犬の行動に影響を及ぼすという内容である(*1)。

一方、最近の研究には、将来、盲導犬のトレーニングが予定されている子犬とその母犬について、母犬のケア行動がどう子犬に影響し、また、盲導犬としての適不適に影響するかを観察したものがあった。

そのために、研究者らは98頭の子犬の誕生から成犬期までを追跡調査。その結果はとてもユニークなものとなっている。

母犬としてのケア行動レベルが高い場合、その子犬は将来的に盲導犬のトレーニングに失敗する(不適合になる)率が高い傾向にあるというのだ。前出の研究結果とは真反対と言ってもいいこの結果に、ん?逆なのでは?と思いたくなるが。

そうした子犬は若犬になっても何か問題に直面した時の解決能力に欠け、より不安傾向があって、目新しい問題に直面した時にも声を出しやすいと。

たとえば、授乳の際に母犬が寝そべっている時には、子犬も楽にお乳を飲めるのに対して、母犬が座っていたり、立っていたりする場合、子犬はお乳を求めてより動き、格闘しなければならない。このようなケア行動レベルが低い母犬に育てられた子犬のほうが、将来的に盲導犬のトレーニングに成功する(適合する)率がより高いというのである(*2)。

それはなぜかのか? 考えられるものとして、一つには、立ったまま授乳する母犬のように、ケア行動レベルが低い母犬の場合、子犬にしてみるとなんとかしなければならない小さな課題が目の前にあるわけで、生まれ落ちた時からそれを克服するという経験を積んでいることが、盲導犬に必要な課題をクリアするのに有効に働いているのではないか?ということ。

もう一つには、ケア行動レベルがより高い母犬では、ストレスに関連するホルモンであるコルチゾールの分泌量も高いそうで、それが子犬の行動に影響を与えている可能性も考えられるというのだ。であるならば、社会化期のピークを母犬や兄弟犬と十分に接触して育った子犬はストレス耐性も高いと言われることとも矛盾するのでは?と、やはり考えたくなる。

この結果に対して、別の専門家は盲導犬という特殊な条件を必要とする犬には言えることなのかもしれないが、他の一般的な犬にもあてはまるというわけではないと思うと言っている(*3)。

どうやら、母犬の行動が子犬に与える影響というのは、私たちが考えている以上にもっと複雑なのかもしれない。
参考資料:
(*1)Influence of morning maternal care on the behavioural responses of 8-week-old Beagle puppies to new environmental and social stimuli / Giovanna Guardin et al. / APPLIED ANIMAL BEHAVIOUR SCIENCE, August 2016, Volume 181, P137-144, DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.applanim.2016.05.006
(*2)Effects of maternal investment, temperament, and cognition on guide dog success / Emily E. Bray et al. / PNAS, August 22, 2017, vol.114 no.34, DOI: 10.1073/pnas.1704303114
(*3)Coddled Puppies Make Poor Guide Dogs, Study Suggests / NPR
文/犬塚 凛

配信サイト:「ペットゥモロー」(小学館)
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