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飼い主との死別を経てセラピードッグとなった柴犬【保護犬と暮らす】

保護犬と暮らす

飼い主との死別を経てセラピードッグとなった柴犬

老人ホームにて。赤毛の柴犬を膝の上に抱いた高齢の女性が、「よく来たね」「ありがとうね」と言いながら目を細め、手の平で何度も犬の体を撫でる。当の犬は撫でられるままに身を任せ、大人しくしているが、その様子はまるでセラピードッグとしての務めを理解しているかのようだ。


セラピードッグとして活躍中のゴン太(柴犬、オス、12歳当時)/©奈良岡

犬の名は“ゴン太”。かつて、彼にはこうして優しく撫でてくれる人がいた。

時を遡ること19年前、年老いた母親と暮らす、ある男性がおり、その人のたっての望みは、「犬と暮らすこと」だった。男性は重い病を患っており、日々自身の身体や気持ちと闘う中で、心の拠り所を犬に求めたのかもしれない。そうして迎えられたのが、ゴン太なのである。

すくすくと成長し、柴犬らしく活気溢れる姿や、純粋な眼差しに、その男性が何を感じたのか、それは想像することしかできないが、きっと特別なひと時であったのではなかろうか。

しかし、残念なことに、その男性は帰らぬ人となってしまった…。

年老いた母親は、息子の形見とも言えるゴン太の世話をし続けたものの、元気盛りの柴犬相手では体力がついていけずに度々ケガをしそうにもなり、それを見かねて代わりに散歩をしてくれるような人もいたのではあるが、飼い続けることに限界を感じてもいた。ゴン太の今後を考えねば…と。

奈良岡さんご夫妻がゴン太の存在を知ったのは、ちょうどその頃だった。奈良岡さんは時々実家に戻っては近所の散策を奥さんと一緒に楽しんでいた。そんな折に、ある家の玄関先にいた柴犬に目が留まる。性格のよさもあってか、通学途中の小学生に人気があり、新聞配達の人にも可愛がられているようだった。

揃って犬が好きで、飼えるなら柴犬と決めていた奈良岡さんご夫妻は、以降、実家に戻る度にこの犬と戯れるようになったのである。

そして、ある日のこと、いつものようにその柴犬とふれあっているところへ、家の中から出てきた高齢の女性が犬の生い立ちや、処分も含めた今後の行く末について考えあぐねていると語り出した。それを聞いた奈良岡さんの口から出てきた言葉は、

「もしよかったら、このコ、うちで飼わせてもらえませんか?」

高齢の女性にとっては、思ってもみなかった言葉であったことだろう。

「そんなに柴犬がお好きなら…」

こうしてゴン太は奈良岡さんご夫妻と暮らすこととなった。


ゴン太、3歳当時/©奈良岡

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