【青山尚暉のワンderful LIFE】『不思議な力』(2)
第四章 『不思議な力』(2)
レモンは手術後の傷がなかなかふさがらず、しばらくは退院できませんでした。
その間、鹿児島からエクル (後のマリア) を含む第2便の犬たちが東京のボランティアのOさんの元へやって来ることを知りました。Oさんの負担を少しでも軽くできればと、東京での行き先(里親)がただ一頭、決まってなかった(地味だったんですね~)エクルを引き取ることを申し出たのです。Oさんは快くわが家にマリアを託してくれました。( そのときの経緯は、第一章 『向日葵の花飾りに込められた希望』を参照して下さい)
ある日、Oさんへ連絡すると、レモンはすでに退院し里親になりたいという方が現れ、今はそこで暮らしているというではありませんか。
詳しく聞くと、そのご夫婦は鹿児島のボランティアのブログを見ていて、レモンの里親を申し出ていたのです。そうして偶然にもレモンが入院していた動物病院のすぐ近くにお住まいで、その動物病院は先代の犬のかかりつけでもあったそうです。
深い深い縁をそこに感じました。
ご夫婦は以前からゴールデンレトリーバーと暮らしていました。そして里親として迎えた2代目のゴールデンレトリーバーを1年ぐらいで癌で亡くしたつらい経験の持ち主でもあったのです。だからこそ、でしょうか、レモンという子が癌であっても、ぜひ面倒をみさせてほしい、と申し出てくれたのだそうです。とても普通では考えられないことです。
わが家からレモンがいなくなって以来、家庭内には殺伐とした空気が漂っていました (マリアがやってくるまでのハナシですが) 。でも、レモンに新しい里親が決まったことを知って以来、カミサンは自分よりレモンを幸せにしてくれる家族が見つかったことに感謝し、本当に喜んでいたのです。
素晴らしいご夫婦と家族は、レモンに最大限の愛情を注ぎ、できる限りの高度な治療を施してくれました。しばらくは再発もなく元気に暮らしていたのですが、残念なことに去年再発。再手術を受けたそうです。
とはいえ、レモンは今、毎日をとても幸せに、元気に暮らしています。その様子を、ご夫婦から直接伝え聞くことができます。あちこちにお出掛けしたときの楽しそうな写真を見せていただくこともできるんです (クルマ酔いはしているらしいですけど) 。もしそのご夫婦の家に行かなかったら・・・レモンの運命は大きく変わっていたかも知れません。
富山を訪れたときのレモンちゃん。この写真は、現在の飼い主のご夫婦から送っていただきました。写真はもっとたくさんあります。しかし、ますますナナに似ている・・・2008年7月撮影
その後、レモンは13歳近くまで幸せに暮らし、生き抜いて、犬生をまっとうしました。10歳まで病気ひとつしなかった、わが家の先代ゴールデンレトリーバーのナナより長生きでした。レモンは予約が何年もとれない軽井沢の「星のや」にも行ったそうですよ。幸せすぎます。
鹿児島の崩壊した繁殖場でいっしょだったレモンとマリアが東京で再会
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