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「アニマルセラピー活動の今」JAHA年次大会市民公開講座レポート(前編)

福祉や教育、医療の分野において、犬や猫、ウサギ、馬などの動物を介在させ、そのふれあいから得られる様々な効果を目的とした活動は一般的にアニマルセラピーという言葉で表現されているが、その中にはレクリエーション的要素の強い動物介在活動(Animal Assisted Activity / AAA)、人間の医療従事者の介入が必要であり、治療目的のある動物介在療法(Animal Assisted Therapy / AAT)、子供への教育や心を育むことを目的とした動物介在教育(Animal Assisted Education / AAE)といったものがある。

公益社団法人日本動物病院協会(JAHA)では、これらをまとめてCompanion Animal Partnership Program (CAPP / 人と動物のふれあい活動))と呼び、1986年に活動をスタートして以来、今年で30周年を迎えることとなった。

去る10月15日~16日の2日間にわたり、東京大学にて平成28年度JAHA年次大会が開催されたのだが、その中の市民公開講座では、幼稚園や小学校(特別支援学級を含む)をはじめ、小児医療やホスピスなどの医療現場、そして被災地の仮設住宅での活動報告や今後の展望についての講演や発表があり、さらには高齢者のペット飼育におけるシステムづくりに関する講演もあった。

犬とのふれあいによって変化、成長していく子供たち

小学校の子供たちを対象とした活動事例をご紹介しよう。講演者は宮崎県にある綾部動物病院の家庭犬しつけインストラクターである綾部ゆみ子さん。綾部さんのご主人は獣医師であるということもあって、同病院スタッフらと共にチームを組み、保育園や幼稚園、小学校、病院のデイサービス、障がい者施設などで活動を行っている。

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「動物介在活動に関わる先生たちもが変わっていくこともとても楽しいです」綾部動物病院綾部ゆみ子さん(家庭犬しつけインストラクター)/©Pmoon

子供たちに教えておきたい基本的なこと

綾部さんたちのチームは、1年生~6年生までの通常学級の他、特別支援学級、クラブ活動(4年生~6年生、年間20時間)、委員会活動(5年生~6年生/ウサギ飼育)にも介入し、通常学級においては年間で約10校からの依頼があるそうだ。

活動の基本ベースとなるのは5つ。1つ目は、保健所の専門家による手洗いの指導である。これから犬のことを勉強するのだという子供たちの意欲を高める意味合いもあるが、人獣共通感染症や食中毒の問題もあり、自分の手が菌を運んでしまうこともあるのだということをしっかり教えるという狙いがあってのこと。併せて、保健所の役割や施設のこと、子供向けの終生飼養・適正飼養についての話もある。

2つ目は学年に合わせた動物(犬)についての勉強。たとえば、体温を測ってみたり、聴診をしてみたりして犬の健康や衛生管理について学ぶ他、トイレはペットシーツの上でさせ、ウンチやオシッコは子供たちがちゃんと片付けるんだよと指導するのはもちろん、子供のためのしつけ教室も行っている。

3つ目で学ぶのは、犬の触り方。大人であってもこれを理解できていないこともままあり、そのために犬に恐怖心を与えてしまったり、さらにはそれによって咬まれたりというケースもあるので、これは是非とも子供には教えておきたいものの1つだろう。

4つ目は、放れている犬への対処の仕方。立っている時には犬と目を合わせずに下を向き、腕組みをしてそのままじっと動かない。または地面にダンゴ虫のように体を丸めて、犬が去るまで待つ。最初は小型犬を放し、だんだんと慣れてきたなら必ず大型犬を放して体験学習するそうだが、この際、犬が入れない退避スペースというのが設けられており、怖いと感じた子供は手を挙げてそこに退避できるように配慮されている。つまり、その犬の様子を見て、子供が自分の意志で危険回避することも同時に学習できるようになっているわけだ。

この際、時には犬同士が遊び始めることもある。子供たちからすると犬がケンカをしているように見えることもあるが、遊びであるということと同時に、「犬はテンションが上がり過ぎるとブルブルッと体を振るって、あとはお互いに引いちゃうんだよ」と、人でも“引く”ことが大事である場合もあるということを、犬を通して教えている。

5つ目は絵本やパズル(犬がまだ怖い子向け)、ブラッシングや散歩(少し慣れた子向け)などいくつかのブースを設けて、子供たちが自分の興味があることをやってみる自主的体験学習となる。最初は犬にまだ慣れず、絵本やパズルで遊ぶ子も多いものの、徐々に犬を観察して絵を描くになる、次には触れてみる、さらにはブラッシングに挑戦、最終的には散歩をするというふうに子供たちは変化していくという。

ある小学校で3年生の遠足があった時のこと、みんなでお弁当を食べていると、そこへ放れた大型犬がやって来たことがあった。

「子供たちは誰一人騒ぐこともなく、落ち着いて行動できたそうで、それはこの体験学習が生かされた結果だと学校の先生からお電話をいただきました。やはり体験というのはとても大事だと思います」と綾部さん。

嫌いな野菜だって食べられるようになる

特別支援学級については毎月1回の活動を行っており、現在、約10校に出向いている。内容としては通常学級とほぼ同じであるが、児童の状況や担任の先生の希望により柔軟に対応する。

小学校へ入学以来、野菜が大嫌いで一度も食べたことのない子がいた。ある日の活動では、ちょうど給食の時間。相変らず野菜を食べようとしないその子に、「君が野菜を食べないことをルカちゃん(セラピードッグに認定されている綾部さんの愛犬)が心配しているよ」と言っただけで、嫌いな野菜を口に入れ、時々吐きそうにしながらも一生懸命食べようとしたそうだ。

私事で恐縮だが、筆者の姪っ子が幼い頃、極端に小食でなかなか食べようとしないことが心配でもあった。それを助けてくれたのが筆者の愛犬で、一緒に食事をするだけでもりもりと食べてくれるのだ。同じような経験をしたことがある人は多いのではないだろうか。犬とはなんとも不思議な動物だ。

そもそも綾部さんがCAPP活動を始める発端となったのは、ご自身が開いている犬のしつけ教室に通っていたある小学校教員の一言だったと。それは、「児童と目が合わない、会話ができず、意思疎通もできない。犬を連れて学校に来てもらえないか?」という相談だった。

洋服の脱ぎ着をはじめ、自分のことができない子。自傷癖があって何かがある度に自分の頭を傷つけ、血だらけになってしまう子。そんな子供たちが先生や周囲の大人に言われたからではなく、自ら暑がる犬のためにバケツに水を汲んで重そうに運んできてくれる。犬と会える日は学校も休まない。犬の存在は、このように瞬時に子供の自主性や行動を変えてしまうこともある。綾部さんたちは数年間そうした子供たちを見守り続け、やがてはいい表情を見せるようになって小学校を卒業していったという話だ。

確かに単発でできる活動もある。しかし、特にこういったケースでは、また対象や状況によっては、持続的な活動であるということが重要になるのではないだろうか。

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