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ウソ泣きがしつけの最後の手段【柴門ふみの50過ぎて犬を飼う】

リンコが我が家に来てから2週間が過ぎ、生後4か月を迎えようとしていた。そこで、本格的なトイレトレーニングが始まったのだ。

前回登場のドッグトレーナーさんに、再度教えを乞うことにした。

「ずっと見張っていて、オシッコをしたそうにしたらトイレシートの上に連れていき、成功したらご褒美に鶏のささみをあげましょう。それを根気よく繰り返せば、必ず成功します」

「ずっと見張る、って・・・。何時間ぐらい見張るんですか?」

「起きてる間中、一日です」

その結果、2014年の2月、私はまるまる一カ月仕事もせず一日中子犬を見張っていたのである。

幸いフィギュアスケートのシーズンだったので、テレビをつけっぱなしにしていた。

「リンコ、一緒に羽生君を応援しようよ。フレー、フレー、ゆ・ず・る!」

大きな声を出し、犬との時間をつぶしていたのである。

しかし、スケートに熱中してしまうと、犬のトイレサインを見逃してしまう。間に合わずにカーペットの上に漏らしてしまうこともしょっちゅうだった。小だけではない。子犬はまとまって便を出せないため、一日中少量のうんちを、ほぼ垂れ流し状態なのである。

おかげで一日に何度も、ブラシで便をこすり落とさなくてはいけなかった。

「トイレトレーニングが完成する日が、果たして本当に来るのかしら」

私はだんだん不安になってきた。

そんなある日、ついにリンコが自分からサークル内に入り、トイレシートの上でオシッコをしたのである。

「リンちゃん、えらいっ!」

私は喜びの声をあげ、そしてご褒美の鶏ささみを与えたのである。3歳までオムツがはずれなかった長男が初めてオマルの上でオシッコの成功した日を、私は思い出していた。

以後、一進一退を繰り返しながらも、ほぼ一カ月でトイレトレーニングは完成した。良かった。これ以上長引けば私は休筆宣言せねばならなかった。

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この時期、もう一つ躾なければいけない課題が私にはあった。

リンコが私の足首を、噛むのである。

コーギーという犬種は、元々牧場で牛の足首を噛んで囲い込ませるという働きの品種だったのだ。そのせいか、「足」を噛む本能がリンコにも残っていたようなのだ。

子犬とはいえ、噛まれると痛い。そこで私は、ゴム長靴をきれいに洗い、リンコと過ごすときは室内でもそれをずっと履いていることにした。すると、固いゴムはさすがに不味いのか、やがてリンコは足首を噛むのをやめるようになった。

「もう、いいかな」

そう思い、ある日私がゴム長を脱いで普通のスリッパに履き替えたとたん

「ガブリ!」

リンコが思いっきり私の足首を噛んだのである。乳歯ではあったが、くっきり歯形がついた。

さすがに私も頭に来て、

「えーん、えーん、リンちゃんが噛んで痛いよ〜えーん、えん」

両手で顔を覆い、大声でウソ泣きをしてみせたのだ。

するとリンコは、うずくまっている私の顔に近づき

「きゅん、きゅん」

甘えたような声をだしながら、濡れた鼻先を私の頬に押し付けてきたのである。

「えーん、えーん」

ウソ泣きを続けながら、指の隙間からそっとリンコを見てみると、なんとも申し訳なさそうな不安そうな顔でじっと私を見つめているではないか。子犬のあまりの可愛らしさに思わず、

「ウソ泣きだよーん!」

両手でぎゅっと抱きしめたのだった。

そして以後まったく、人間の足首を噛むことをしなくなったのである。

犬の躾には、叱るより寂しい思いをさせた方が効果あるとよく言われる。

叱ると、大きな声を出して遊んでくれているとどうも勘違いするらしい。

一方、犬は群れで行動する動物なので仲間はずれが一番こたえるのだとか。

しかしこの一件以来、我が家では(というか私は)、躾の最後の手段は「ウソ泣き」なのである。

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文/柴門ふみ

漫画家、エッセイスト。
1957年徳島市生まれ。
代表作「東京ラブストーリー」「あすなろ白書」「家族の食卓」など。
現在夫、愛犬リンコ(2歳)と共に東京武蔵野市に住む。

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