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【ペットのがん治療】熱でがんが消滅!?古代ギリシア時代でも用いられていた温熱療法について

PETomorrow(ペットゥモロー)】

Dr.岡本のペットのがん治療最前線

-がんの治療(5)-

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今回は、温熱療法について紹介します。《前回の記事を見る》

温熱療法とは

温熱療法とは、がん細胞が正常細胞と比べて熱に弱いという性質を利用したがんの治療法です。

温熱療法の歴史は古く、熱によって“がん”が消滅したと、医学の父であるヒポクラテス(古代ギリシア,紀元前460-370年)は報告しています。ドイツのブッシュは丹毒に冒され高熱を発した患者さんの“がん”が消失したことを1866年に報告しています。また、アメリカのコーリーは、感染すると高熱を出す数種類の細菌をわざとがん患者さんに注射して、高熱によって手遅れの“がん”の治療を行ったと1900年頃に報告しています。1960年代になって科学技術が進歩すると、有効な加温の方法が開発されるとともに、“がん”に対する温熱の効果が基礎研究によって明らかにされ始めました。

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図1.温熱療法とは

温熱療法には、全身を加温する方法(全身温熱療法)と、がんやその近くを温める方法(局所温熱療法)があります。一般には局所温熱療法が主に行われる方法で、マイクロ波や電磁波を用いた装置で局所を温めます。体の外から加温するのが最も多く行われる方法ですが、その他に食道、直腸、子宮、胆管といった管腔(かんくう:空間のある場所)内に器具を入れて加温する方法や、がん組織の中に数本の電極針を刺し入れて加温する方法が試みられています。

がんに対する効果は41℃以上で得られますが、約43℃以上で特に強くなることが知られています(図1)。体の表面に近いがんは目的の温度まで比較的容易に温めることができますが、体の奥深いところにあるがんは、脂肪、空気、骨が邪魔をして十分に温めることが難しい場合が多く、温熱療法の効果が不十分になる可能性があります。

温熱療法は通常は単独で用いるのではなく、放射線や抗がん剤の効果を強めることを目的に、放射線や抗がん剤と併せて使います。最も研究が行われているのは局所温熱療法と放射線を併せて行う治療で、脳腫瘍、食道がん、乳がん、大腸がん、膀胱がん、軟部組織腫瘍等のがんで試みられています。

加温時間は長ければ長いほど効果が増しますが、一方、治療を受ける患者さんの負担が大きくなります。ヒトの場合、45~60分くらいが普通です。毎日治療をするとがん細胞が熱に強くなり、温熱療法の効果が下がりますので、3日くらいは間隔を空けて治療します。週に1~2回治療するのが一般的です。

温熱療法に伴う副作用には、加温した部位のやけど、痛みがあります。体の深いところを治療するのに適した高周波の加温装置を使用した場合は、頻脈、体温上昇といった全身の症状が出ることがあります。放射線と併せて用いたときには、放射線の副作用を増悪させないという報告が多くみられます。

鳥取大学動物医療センターでは、数年前より温熱療法に関する実験動物を用いた基礎実験を行い、そのデータを元に実際の犬猫の自然発症がん症例に対して本治療法を実施しています。そのうちの1例を紹介します。

症例:犬、シュナウザー、雄、11歳、7.6kg。右後肢付け根の腫脹を主訴に紹介来院。図2は初診時のX線画像です。坐骨が融解しているのがわかります(黄色破線で囲んだ部位の骨が融解)。図3はCT像です。腫瘤(黄色実線で囲んだ部位)はこの坐骨から派生し,骨盤腔内および大腿部に向けて増殖しているのがわかります。

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図2.初診時のX線像

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図3.初診時(第0病日)のCT像

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